牧草肥育農家の飼養頭数増減意向に関する調査結果を公表(豪州)
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は2024年3月、昨年末に初めて実施した肉牛農家意向調査(BPIS:Beef Producers Intention Survey)の結果を公表した。本調査は、23年に豪州連邦政府統計局(ABS)が牛群に関する統計の公表を廃止したことから、MLAが独自の調査として開始したものである。初回となる調査(23年11〜12月実施)では、牧草肥育農家3767人を対象に、牛群の品種や月齢などの情報のほか、生産者の牛群規模の増減に関する予定や出荷率、分娩率など、多岐にわたる項目を聞き取り、取りまとめている。
この結果を見ると、24年末までの飼養頭数に関し「増やす」と回答した農家は全体の38%となり、「減らす」と回答した農家の47%を下回った(図)。「増やす」と回答した農家の理由として、一定の降雨による牧草確保の可能性のほか、肉牛取引価格の上昇見通しを挙げており、このうち44%の農家は長期的な規模拡大計画を進めているとしている。一方、飼養頭数を「減らす」と回答した農家の理由として、今後の乾燥気候による牧草確保の困難性や、肉牛取引市場の見通しの不安定さに加え、生産コストの増大や他の農作物への転換、健康上の問題、廃業などを挙げている。
小規模農家に比べて大規模農家のほうが規模拡大に前向きな意向が多く見られる。このことから、大規模農家による増頭意向を踏まえると、24年末時点の全牧草肥育牛の頭数は、前年同期比1.0%増の2444万2596頭とわずかながらも増加の見通しとしている(表1)。地域別に見ると、南部は4年連続の降雨に恵まれて牧草が潤沢に生育したことで、雌牛の保留が進み、23年末時点で牛群の再構築が完了していることから、今後は1%の減少が見込まれるとしている。一方で北部は、南部に比べて降雨量が少なく、雌牛の保留が比較的遅く進展してきたため、23年末時点で牛群の再構築が完了していないことから、今後は3%の増加が見込まれるとしている。
また、調査時(23年末)の飼養頭数の内訳は、繁殖牛が1248万頭と半数以上を占めている。地域別に見ると、南部は北部に比べて繁殖牛の頭数が多く、去勢牛の頭数が少ない傾向があった(表2)。他方で品種別推定飼養頭数では、アンガス種が全体の38.3%と最も多く、次いでブラーマン種(19.5%)となっていた。ただし、地域別では特徴が大きく異なり、南部ではアンガス種が574万頭と最も多く、次いでヘレフォード種が95万頭飼養されているが、北部では耐暑性のあるブラーマン種が314万頭と最も多く、アンガス種は48万頭となっている(表3)。
MLAは、今後年3回のペースで同様のBPISを実施するとしている。
【調査情報部 令和6年4月25日発】
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