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デニッシュ・クラウン社、食肉処理場を閉鎖し、経営方針を転換(EU)

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 デンマークの食肉生産最大手デニッシュ・クラウン社は2024年4月18日、国内の肉豚供給頭数の減少により、同国にあるリングステッド食肉処理場を同年9月中旬に閉鎖することを公表した。この閉鎖により約1200名の雇用が失われる一方、今後3年間で約2億5000万クローネ(55億4500万円:1クローネ=22.18円(注1))の新たな投資が可能となり、既存の4つの食肉処理場(ホーセンス、ヘニング、ブランズ、ヴェイエン)で新たに約300名の雇用が見込まれるとしている。欧州委員会によると、23年12月時点の同国の肥育豚頭数は255万7000頭(前年比6.1%減)とかなりの程度減少している(図1)。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2024年3月末TTS相場。
図1
 同社によると、今後は生産・加工を一部の食肉処理場に集中させ、主軸業務を食肉の生産・供給からベーコンなど食肉加工製品の製造に移行し、欧州市場で食肉に特化した大手食品会社としての地位の確立を目指すとしている。
 同社のヴァリュールCEOは「リングステッドの食肉処理場の閉鎖は難しい決定であったが、デニッシュ・クラウンの食品会社としての地位向上のために必要な選択であった。食肉処理場の効率化を図り、欧州の消費者に付加価値の高い食肉加工製品を供給すべく全力を尽くす」と閉鎖の目的を述べている。また、近年の豚肉の輸出市場は米国、ブラジル、スペイン、カナダが大きなウェイトを占めており(図2)、欧州市場でニーズのある付加価値の高いベーコンなど食肉加工製品の製造を増やす必要があるとしている。
図2

新規経営戦略とその背景

 デニッシュ・クラウン社は2021年6月に策定した「未来に食料を」戦略(Feeding the Future)(注2)の中で、付加価値の高い食肉加工製品のシェア(市場占有率)拡大に戦略的に取り組むとしていた。このため、豚のと畜頭数増加といったそれまでの方針から、付加価値の高い食肉加工製品の製造と高度な持続可能性に重点を移すことで、デンマーク産豚肉の価値向上を優先している。戦略策定後、同社は、英国のベーコン工場に約10億クローネ(221億8000万円)を投資し、年間2億パック以上のベーコンを英国の大口顧客3社に販売している。
 しかし、同年以降、デンマークでは豚のと畜頭数は減少しており、23年の同国のと畜頭数は1446万3770頭(前年比18.7%減)と大幅に減少している(図3)。同社は組合員である養豚農家に充分な対価を支払うためには、同国産豚肉を食肉加工製品として高価格帯市場へ販売・輸出すべく経営戦略のさらなる移行と合理化が必要としている。
(注2)畜産の情報「デンマーク養豚産業による持続可能性への取り組み」もご参照ください。
図3

新たな経営管理手法の導入

 デニッシュ・クラウン社は今後、組合員農家に翌年の豚の出荷頭数(注3)を誓約させ、同社の食肉処理能力の最適化と豚肉の価値の最大化を目指している。
(注3)同社は、誓約した出荷頭数を日別に落とし込んだ数量を「A数量(A volume)」としている。
 
 組合員農家にはA数量の遵守が求められ、出荷頭数が、同社の規定を超えてA数量を上回った場合は、買い取り額から一定の金額が差し引かれるため、組合員農家は無計画にA数量を増やすことはできない。A数量の変更は可能であるが、その場合は12カ月前の申請が必要となる。
 同社のアスガー・クロッグスガード会長は「私たちはあらゆる手段を駆使して、今すぐ何かを実行する必要がある。過去20年間、私たちは生産能力の増強と縮小のために、何百人もの従業員の雇用と解雇を繰り返してきた。生産能力の維持には新入社員の育成などに何百万クローネもの多額のコストがかかる。このため、私たちは組合員農家の豚の出荷頭数を安定化することにより、食肉処理能力の最適化を図る必要がある。この最適化により、組合員農家に欧州の他の地域と同程度の対価を支払えることになる」と述べた。
【渡辺 淳一 令和6年4月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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