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NZ研究チーム、代替たんぱく質市場への進出戦略の策定を提言(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)政府が設立している研究開発イニシアチブ「Our Land and Water National Science Challenge」(注1)から助成を受けている「たんぱく質の将来見通しに関する研究プロジェクトチーム」(注2)は3月27日、代替たんぱく質の増加がNZの経済・土地利用・環境に与える潜在的影響に関する調査報告書「プロテイン・フューチャーズ」を公表し、4月16日に当調査の報告会を開催した。

(注1)NZのトップレベルの科学者が分野、機関、国境を越えて協力し、国家的課題を解決することを目的として2014年に設立された研究開発イニシアチブ。「Our Land and Water」を含む11の目標からなる10年間のプログラムであり、企業・技術革新・雇用省(МBIE:Ministry of Business, Innovation and Employment)を通じて資金が提供されている。
(注2)「Our Land and Water National Science Challenge」におけるプロジェクトの一つ。代替たんぱく質がNZの経済・土地利用・環境に与える影響に関する将来見通しの作成・モデル化などの取組を通じて、より効果的な対応を図ることを目的としている。

1 プロジェクトの経緯

 NZでは、2018年に代替たんぱく質の動向をより注目すべきという趣旨の意見書が、政府と産業界からそれぞれ出されている。そこでは、代替たんぱく質の進展は、不確実性はあるものの、NZの食料生産、科学的な試み、土地利用などの将来見通しに対して重大な影響を及ぼす可能性があると報告されている。このような予測を受け、既存の動物性たんぱく質サプライチェーンの潜在的な課題や、植物性たんぱく質の進展が農地利用に与える影響など、NZにおけるたんぱく質生産の位置づけを包括的に検討するため、当該プロジェクトが進められることとなった。
 本報告書では、経済モデルを用いて、代替たんぱく質の種類(図)ごとの潜在的な成長シナリオを作成し、NZにおける社会的・経済的影響について分析しており、代替たんぱく質のリスクと潜在的なチャンスに備えるため、NZ政府に対して国家的な政策や戦略を求める提言をしている。
図 代替たんぱく質の種類

2 NZ政府への提言

 報告書では、NZ政府に対する提言として、次の5つの見解をまとめている。
 
 (1)温室効果ガス削減の取組の強化
  NZの動物性たんぱく質生産は、輸出市場で低GHG(温室効果ガス)代替たんぱく質が台頭してくることを想定し、温室効果ガスの削減をより強力に推進する必要がある。炭素削減が進まなければ、第一次産業に重大な影響を及ぼす可能性が著しく高くなる。
 
 (2)バイオ原材料供給事業への参入
  細胞ベースの製品用血清など、タンパク質市場が代替たんぱく質に大きく転換するには、高品質な原材料を安定的かつ大量に供給する必要がある。そのためには、この分野での科学的研究の確立と、NZの在来動物から新素材を探すバイオプロスペクティング(生物資源探査)(注3)を行う必要がある。なお、植物性たんぱく質の大量供給は、採算が合う可能性は低い。

  (注3)生物資源の中から有用な遺伝資源を探索する取組を指す。生物学あるいは生物一般を意味するバイオ(bio-)と鉱物資源の試掘を意味するプロスペクティング(prospecting)との造語。
 
 (3)市場再編への対応
  NZは、市場の大幅な再編に備える必要がある。代替たんぱく質技術の進展により、これまで輸入に頼っていた国々(中国、イスラエル、英国、シンガポールなど)が、たんぱく質を自国生産できるようになる可能性がある。その結果、動物性たんぱく質の輸出に依存している国は、特に大きな打撃を受ける。
 
 (4)高付加価値の「天然」たんぱく質生産の維持
  たんぱく質市場は、高品質の「天然」たんぱく質と低品質の「人工」たんぱく質に二分される可能性が高いことから、NZは将来の発展のための重要な戦略として、現状の付加価値の高い自然な生産形態を維持し、高品質の「天然」たんぱく質を供給し続ける必要がある。最悪のシナリオは、畜産酪農が高集約的な生産に移行すると同時に、競合する安価な「人工」たんぱく質が大量に流入してくることである。これに対抗するために、今後数十年にわたって高集約的な生産に多額の投資を行うことは、インフラコストにより従来の農業は急速に再編成することができないため、リスクの高い戦略といえる。
 
 (5)酪農部門への対応
  NZは、特に酪農部門に注意する必要がある。植物性代替乳の増加傾向に加え、現在は、細胞培養肉や植物性代替肉よりも、精密発酵由来の乳たんぱく質の将来性の方がはるかに大きい。ホエイプロテインの商業生産はすでに確立されており、カゼインと乳脂肪も商業化には至っていないが生産可能である。フォンテラは、精密発酵由来の乳たんぱく質を研究している新興企業に投資しており、このような取組は酪農部門の存続を支える有効な戦略である。
【渡部卓人 令和6年5月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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