米国農務省、加熱用鶏肉製品から検出されるサルモネラ菌の規格基準を設定(米国)
米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)は4月26日、加熱用鶏肉製品のうち、パン粉をまぶしたスタッフド・チキン製品(以下「スタッフド・チキン製品」という)
(注1)から検出されるサルモネラ菌の規格基準を設定することを最終決定した。USDA/FSISは、米政府が策定した国家目標「健康な人々2030」の達成に向けて、21年10月に鶏肉製品を介するサルモネラ菌感染症の低減に向けた包括的な取り組みの実施を発表して以来、鶏肉業界、専門家および消費者団体などの関係者との議論、パブリックコメントの実施などに取り組んできた
(注2)。
(注1)生の鶏肉に具材を詰め込み、パン粉をまぶした食品のこと。
(注2)米政府は国家目標「健康な人々2030」にサルモネラ菌感染者数の低減を位置付け、30年までに家庭内サルモネラ菌感染者数を24.8%減少させる目標を立てた。詳細は「【海外情報】米農務省、加熱用鶏肉製品のサルモネラ菌検出の規制化に向けた方針を発表(米国)(令和4年8月19日発)」を参照されたい。
1 背景
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、サルモネラ菌感染症は年間135万件ほど発生しており、約2万6500人が入院、約420人が死亡しているとされる。また、関係省庁食品安全共同分析によると、1998年から2021年までのサルモネラ菌感染症の発生データから推定される発生源となった食品の割合は、鶏肉製品が18.6%と最も高い(図)。
USDA/FSISは、スタッフド・チキン製品は一見すると焼き色が付いており、生の鶏肉製品ではないような誤解を消費者に与えかねないこと、また、消費者による個人差のある調理方法では製品内に存在し得るサルモネラ菌を死滅できない可能性があることなど、サルモネラ菌感染症発生データや消費者行動調査に基づく理由から、スタッフド・チキン製品特有のリスクを挙げた。そして、スタッフド・チキン製品が生の鶏肉であることの表示や安全な調理方法の付記の徹底のみでは製品がサルモネラ菌に汚染された場合のヒトへの感染リスクを低減することはできないとし、一定濃度以上のサルモネラ菌が検出されたスタッフド・チキン製品を流通させないことが必要であると判断した。
2 規格基準の内容
USDA/FSISは、スタッフド・チキン製品の製造施設において、原料となる鶏肉の定期的な検体採取と確認試験を実施する。1グラム当たり1CFU(コロニー形成単位)以上のサルモネラ菌が検出された場合、合衆国法律集21セクション453に基づき、「健康を害する可能性がある鶏肉製品」として、検出された検体と同一ロットで製造されるスタッフド・チキン製品の流通を停止することとした。なお、この規制には約1年間の猶予期間が設けられ、2025年5月1日から施行される。
3 業界の声
全米鶏肉協議会(NCC)のブラウン会長は今般の規制化を受け、年間2億食以上のスタッフド・チキン製品の減産、500〜1000人の失職、USDA/FSISの試算を上回る年間コストの上昇などにより、中小規模の製造会社を廃業に追い込む可能性が高いと懸念を表明した。また同会長は、NCCは効果的な公衆衛生対策と科学的根拠に基づいた政策を強く支持するが、USDA/FSISによる今般の規制化はこのどちらにも当たらないと非難した。
一方で、これまでにUSDA/FSISに対して、スタッフド・チキン製品から検出されるサルモネラ菌の規格基準の設定の必要性を訴えてきた米国消費者連盟(CFA)のグレミリオン食品政策部長は、スタッフド・チキン製品に起因するサルモネラ菌の集団感染は1998年以来14件発生しているとし、リスク管理を消費者による調理に依存せずに、店頭に並ぶ製品の安全性を証明するための決定を称賛した。
【調査情報部 令和6年5月10日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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