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欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2024年5月3日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。このうち、23年の生乳・乳製品の需給状況および24年の需給見通しの概要について紹介する。
(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年2回(24年に年3回から年2回に減少)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

生乳

 2023年の生乳出荷量は、前年並みの1億4490万トン(前年比0.1%増)と前回(10月)見通しから下方修正された(表1)。前回見通しでは、同0.3%増と見込まれていたが、天候や環境規制など加盟国間の生乳生産状況に差が生じ、生乳出荷量が総じて減少したことが影響した。
 同年の生乳取引価格は、22年の記録的な高騰後、23年上半期(1〜6月)に大きく下落したが、その後、鈍化傾向となり、同年第4四半期には上昇に転じたことで、年間を通して過去5年平均(18〜22年)を上回る水準で推移した。
 また、23年12月時点の経産牛飼養頭数は、同1.7%減の1940万頭となった。23年は、エネルギー価格や肥料などの生産コストが前年に比べ低下したものの、過去10年平均を大きく上回って推移したことや、牛肉価格が高値で推移していることから経産牛の淘汰(とうた)が進んだことが影響した。
 24年については、生乳取引価格が過去5年平均に比べ15%高の水準で推移しており、また、一部の加盟国を除いて飼料生産と放牧に適した天候が続いていることで、酪農家の収支改善見込みから、1頭当たり乳量の増加(同0.9%増)が経産牛飼養頭数の減少(同0.5%減)を相殺し、生乳出荷量は同0.4%増の1億4550万トンと予測されている。
表1

バターおよび脱脂粉乳

 2023年のバターの生産量は、欧州産バターの価格競争力が増して製菓・製パン需要が堅調に推移したことから、前年比1.5%増の231万4000トンと前回見通しから上方修正された(表2)。また、同年の輸出量もすべての主要輸出先で増加し、同14.5%増の28万1000トンと上方修正された。
 一方、脱脂粉乳の生産量は、前年並みが見込まれていた中で、リビアやサウジアラビア向けなど脱脂練乳輸出の増加により、同5.4%減の140万1000トンと下方修正された(表3)。同輸出量は、アジア、北アフリカおよび中東で需要が増加したものの、中国需要の回復が遅れているため下方修正され、同10.2%増の77万9000トンとなった。
 24年は、前年と同様にバターや脱脂粉乳の輸出量増加の可能性は低いとしつつも、欧州産バターが価格競争力を維持する場合、バターの輸出量は28万5000トン(同1.5%増)とわずかな増加が予測されている。また、脱脂粉乳の生産量は同0.4%増、輸出量は同1.0%増と予測されている。
表2
表3

チーズおよびホエイ

 2023年のチーズの生産量は、前年比1.4%増の1056万6000トンと前回見通しから上方修正された(表4)。同輸出量は、欧州産チーズの価格競争力が増して中国向けを含め輸出量が増加したことで、同3.6%増と前回見通しから上方修正された。なお、同輸入量は、インフレの影響を受け同6.9%減に下方修正された。
 24年のチーズ生産量については、同年の生乳出荷量が同0.4%増とした場合、1063万9000トン(同0.7%増)とわずかな増加が予測されている。また、輸出量は、米国や日本など主要輸出先の需要回復の遅れから23年の増加率を下回るものの、141万6000トン(同2.5%増)と引き続きの増加が予測されている。他方で24年の輸入量は、インフレ見通しの緩和とエネルギー価格の下落に伴う加工コストの低下により、前年並みと予測され、同年の域内消費量は同0.4%増の977万7000トンと予測されている。
 23年のホエイの生産量は、同1.2%増と前回見通しから据え置かれた(表5)。輸出量は、中国向けが減少する中で、日本を含むアジア向け輸出量の増加により、同4.2%増の68万9000トンとなった。
 24年のホエイ生産量については、生乳出荷量の安定を前提に同0.9%増、輸出量は同2.5%増といずれもわずかな増加が予測されている。
表4
表5
【渡辺 淳一 令和6年5月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527