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豪州業界団体、生体牛輸出先の動物福祉向上のための最新技術を導入(豪州)

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 豪州の生体家畜輸出業界団体であるライブコープ(Live Corp)は5月2日、肉牛を中心とした肥育・と畜用生体牛の主要輸出先であるインドネシアとベトナムのと畜場で、動物福祉を向上させる最新技術として、VRトレーニングツール(以下「VRツール」という)を導入したと発表した。
 豪州では、輸出する家畜に対し、農場での管理から輸出先の食肉処理施設までの家畜輸出サプライチェーンにおける動物福祉基準(注1)の遵守を義務付けている。同国の畜産業界は、さらなる発展に向けて輸出先での動物福祉に関する研修などを支援しており、VRツールは気絶処理(スタニング)(注2)の訓練に有用であるとして、ライブコープと豪州食肉家畜生産者事業団(МLA)が共同出資している家畜輸出に関する研究開発・普及(RD&E)プログラム(注3)から助成を受けて開発された(写真)。

(注1)「畜産の情報」2022年11月号「豪州およびニュージーランドにおける生体牛輸出の現状」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002464.html)をご参照ください。
(注2)と畜時の家畜の苦痛を和らげるために家畜を気絶させる工程を指す。主に物理または電気的刺激によって行われるが、衝撃を与える箇所が適切でないなど、精度が不足している場合は、途中で意識が回復して動物福祉上の問題となるケースがある。
(注3)生体牛輸出に関わる動物福祉、サプライチェーンの効率化、市場アクセスの分野などへの研究開発・普及活動に投資することを目的としたライブコープとМLAのパートナーシップに基づく共同事業。資金は主に農家や家畜輸出業者から支払われる賦課金によって賄われており、年間予算の50%以上が動物福祉の改善に向けた取り組みに充てられている。

 
写真 VRツールを用いた訓練風景(Live Corpホームページより引用)
写真 VRツールを用いた訓練風景(Live Corpホームページより引用)

生体輸出の動物福祉

 豪州では、生体家畜の輸出が畜産物の需給調整や地域雇用に重要な役割を果たしており、これまでも動物福祉に関するRD&Eへの投資や、家畜の輸出先に対する支援などを通じて、畜産業界とともに発展してきた。
今回の取り組みについて、ライブコープのウェイン・コリアーCEO(最高経営責任者)は、「インドネシアとベトナムは豪州の主要な生体牛輸出先であり、長年に渡って動物福祉について議論を重ねることができた。その結果として、インドネシアでは豪州産生体牛を処理すると畜場の90%以上でと畜前の気絶処理が導入され、ベトナムでは豪州産に限らずすべての生体牛に対してと畜前の気絶処理を推奨する新たな動物福祉基準(注4)が策定された」と述べ、これまでの成果を強調した。また、「VRツールは1日に数頭しか処理しない小さなと畜場の職員にも訓練の機会を与えることができ、獣医学を学ぶ大学への導入など、家畜輸出サプライチェーンの枠を超えた効果も期待できる」と、今後の展開への期待を表した。
 また、インドネシアの動物福祉担当官(AWО:Animal Welfare Officer)の団体であるフォーラムAWOのアリム会長は、「本VRツールは研修生のトレーニングプログラムの一環として非常に利用しやすい」と評価している。
 加えて、すでにベトナムでは、VRツールを使用した研修生の成績データなどを収集し、従来の研修と比較した場合の気絶処理の精度向上の効果を評価するための試験が行われている。
 
(注4)2023年11月に開催された豪州・ベトナム肉牛シンポジウムで発表された牛に関する新たな動物福祉基準。ベトナムの農業農村開発省が3年かけて策定しており、作業の一部には豪州からの助成金も活用されている。豪州から輸入する牛と同等の動物福祉基準(と畜時)を国内の牛にも適用する内容となっている。
 
【渡部卓人 令和6年5月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532