2050年までの豪州の持続可能な農業に関する分析結果を公表(豪州)
豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)は2024年4月、豪州農林水産省の補助を受け、2050年までの豪州の持続可能な農業に関する将来のシナリオ(道筋)をまとめた「Ag2050 Scenarios Report」を公表した。
本報告書を作成した目的についてCSIROは、豪州農業が50年までに生産性とレジリエンス(強靭(きょうじん)性、回復力)を高め、持続可能な農業システムを実現するために必要な取り組みを示し、豪州農業が将来にわたりどうあるべきかについて、産学官での議論を促進し、行動するためとしている。
本報告書によると、50年に想定される豪州農業のシナリオは、(1)食料の安全保障を優先する、統合され技術的に進歩した「地域の農業資本」を中核とする農業、(2)環境に対応し、新技術を取り入れる「景観スチュワードシップ」農業、(3)漸進的な気候変動対策に重点を置く「気候変動から生き残る」農業、(4)拡大する課題に対処できない「農業システムの衰退」する農業の4つに分類されるとしている(表)(注)。
(注)CSIROによると、いずれか一つのシナリオが優先されるべきとする性格のものではなく、各シナリオにはトレードオフ(一得一失)の関係が含まれるとしている。
環境・気候の事項では、干ばつや洪水などの気象変化に対応した多様な生産方法と収入源の確保、効果的な土地の管理手法の導入のほか、温室効果ガス(GHG)排出量が最も多い畜産分野においては(図1)、GHG低排出技術や炭素隔離、代替たんぱく質の活用などが必要であるとしている。
このほか、(1)サプライチェーンの混乱、(2)労働力の確保、(3)消費者の嗜好の変化、(4)市場アクセスの維持、(5)長期にわたる技術革新など、豪州の農業部門の発展を脅かすいくつかの重要な課題があることも強調されており、これらにいかに対応し、技術的な革新(イノベーション)を加速させるかが、生産性が高く持続可能な農業システムを実現するポイントだとしている。
CSIROではこれらに対し、政策および研究開発分野における5つの検討事項を整理しており、政府や農業界に行動を呼びかけている(図2)。またCSIROによると、過去20年間で一部の生産者の利益が23%低下しており、状況に変化がなければ2050年には最大53%低下する農家も存在するとの見込みから、行動の緊急性を訴えている。
【調査情報部 令和6年5月13日発】
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