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NZとEU、FTAが5月1日に発効(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)政府のマクレイ貿易相は2024年5月1日、EUとの自由貿易協定(FTA)が同日に発効されたことを発表した。同協定は18年6月に交渉が開始され、22年6月に大筋合意(注1)、23年7月に署名され、双方議会での批准を経ていた。

 同協定の発効により、NZからEUに輸出される9割以上の製品に対する関税が即時撤廃され、NZの主要輸出品目であるたまねぎ、ワイン、キウイフルーツ、マヌカハニーなどが無税で輸出可能となった。同貿易相によると、NZの輸出業者は協定発効初日から1億NZドル(96億円、1NZドル=95.61円(注2))の関税削減の恩恵を受けたとしており、即時関税削減額としては、これまでにNZが締結したFTAの中で過去最高額となった。
 一方、交渉段階で懸案となっていたEU向けの牛肉や乳製品については、関税割当が導入され、一定数量が無税または低税率となった(表1、2)。このうち牛肉および粉乳については、関税割当数量が協定発効8年目となる31年まで段階的に引き上げられるが、枠内税率はそれぞれ7.5%、20%を維持することになっている。また、バターは、段階的な関税割当数量の引き上げと枠内税率の引き下げが併用される。チーズは、関税割当数量が段階的に引き上げられ、枠内税率は協定発効年から撤廃される。

表1 NZ-EU FTAにおけるEU側の関税削減スケジュール(牛肉)
表2 NZ-EU FTAにおけるEU側の関税削減スケジュール(乳製品)

 他方、EUからNZ向け製品に対する関税はすべて撤廃され、これにより、EUの主要農産物である豚肉、砂糖菓子、チョコレート、ワインなどは無税でNZへ輸出可能となった。
 

(注1)海外情報「EUとニュージーランド、FTAで大筋合意 (その1:EU側の措置と反応)(EU)」および「ニュージーランドとEU、FTAで大筋合意 (その2:ニュージーランド側の措置と反応)」をご参照ください。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。

 同協定により、両国間の貿易は10年以内に最大30%成長するとされており、35年までにNZの対EU輸出は年間18億NZドル(1721億円)の増加が見込まれている。同貿易相は「貿易はNZの雇用の4分の1を支えており、輸出機会を増やし、経済力を高めるためには国際的なパートナーとの連携が不可欠」とコメントした。また、「EUはNZにとって4番目に大きな貿易相手国であり、22年にはNZの貿易総額(物品およびサービス)のうち10.3%を対EUが占めた」と述べ、FTAの発効により、双方の経済活動と人材交流がさらに深まることへの期待感を表した(注3)


(注3)参考として、NZの隣国である豪州とEUとのFTAについては、(1)豪州側が求める高レベルでの市場開放(2)EU側が求める地理的表示の保護−などの懸案事項で合意に至らず、EUの議会選挙などで少なくとも今後2年間は交渉再開がないとみられている。

【工藤 理帆 令和6年5月14日発】
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