一方、農林水産業界からは、明確化されていない徴収システムなどについて、反対や疑問を呈する文書が連邦政府に提出されているほか、ウェブサイトなどで同様の声明も発出されている。その一例を以下に紹介する。
(1) 全国農業者連盟(NFF)
農家はすでにバイオセキュリティに貢献するための課徴金を負担しており
(注3)、新たな徴収により農家の負担増となる今般の制度導入には反対。2024年5月10日に公表された上院委員会の報告書では、業界団体などからの反対意見を支持しつつも、上院による法案の可決を勧告する内容となっており、矛盾する内容となっている。
(2) キャトル・オーストラリア(牧草肥育牛関係団体)
既存の課徴金は生産額とは関連がなかったが、DAFFが本制度を今後どのように構築していくのか疑問。農林水産業全体で適切な徴収システムを確立し、徴収額が明確に農家に理解されるまで、本制度を導入することを望まない。
(3) グレイン・トレード・オーストラリア(穀物貿易取引団体)
BPL徴収額を算出するための基礎期間は、天候に左右される穀物業界の特性が十分に考慮されていない。また、これまでと別の徴収システムを設けることは、穀物取引業者の複雑な実務コストを増加させることになる。現時点で制度設計に問題があることに鑑みると、今年7月の本制度導入は野心的である。
(4) 豪州穀物生産者協議会
本制度が農家にとってどのような価値をもたらすのか、十分に明らかにされていない。BPLが農家から適切に徴収され、バイオセキュリティのために適切に運用されることを保証する高度なシステムとプロセスの構築が必要。
これら本制度導入が拙速であるといった声に対し、DAFFは新会計年度が始まる7月の導入予定期日に向け、計画的に作業が進められているとしている。しかし、BPLの徴収対象となる84品目のうち、26品目は既存の課徴金制度が存在しないため、徴収システムの構築は複雑になると見込まれている。また、既存の課徴金徴収が行われている品目については、徴収システムの再構築が必要であることから、制度施行日が7月1日以降にずれ込む可能性も示唆されている。
バイオセキュリティの脅威の度合いに関係なく、すべての農家から課徴金を徴収することについては、昨年来、政府がさまざまな機会を通じて理解を訴えてきたが、農林水産業界の反応を見る限り、徴収額の割合を含めた制度設計などについて、施行までにさらなる議論が必要とみられている。
(注3)畜産の情報「豪州の畜産農家における経営収支実態と所得向上の取り組み」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003137.html)をご参照ください。