MLAでは、赤身肉業界のGHG削減を支援するための研究開発や普及事業に対し、1億5200万豪ドル(159億5392万円:1豪ドル=104.96円
(注4))を拠出しており、その中で「Carbon EDGE」と呼ばれるGHG削減への取り組みに関する生産者への理解醸成プログラムも実施している。この中でMLAは、生産性の向上や再生可能エネルギーの利用、適切な家畜排せつ物管理が、GHG排出量削減の主要な手段であるとしている。また、メタン削減に寄与する飼料添加物、育種改良などの新しい手法は、農場経営全体に利益をもたらし、かつ、商業的に実行可能なものであれば、今後業界のGHG削減に大きく貢献する可能性があるとし、CN30の達成に向け、今後さらに牛や羊からのメタン排出削減を検討していく必要があるとしている。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。
他方で、赤身肉関連の政策提言や諮問を行う業界組織であるレッドミート諮問委員会(RMAC:Red Meat Advisory Council)が中心となり、業界関係機関とともに17年に発足した「牛肉持続可能性に関する枠組み(ABSF)」
(注5)の最新の報告書が、5月上旬に公表された。本報告書には、54の持続可能性指標が設定されているが、このうち、環境スチュワードシップに関する指標では、GHG排出削減と炭素貯蔵に関し、CN30に向けた各種取組項目の進捗も示されている(表4)。ABSFの関係者らによると、本指標で強調すべきことは、同業界の21年のGHG削減割合が基準年比で78.2%減少していることや、再生可能エネルギーを生産・利用している生産者の割合が23年に58%に到達している点とされている。
今後も、同業界からのメタン排出削減の動向が注目される。
(注5)畜産の情報2020年2月号「豪州肉用牛産業における環境対策について〜持続可能性の確保に向けて〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000969.html)をご参照ください。