植物由来食肉様食品業界の現状と見通しに関する報告書を発表(豪州)
豪州およびニュージーランドの植物由来食肉様食品に関するシンクタンクであるフード・フロンティアは2024年5月、豪州における同業界の現状と見通しに関する最新の報告書を発表した。
これによると、2022/23年度(7月〜翌6月)の同食品の売上額は2億7250万豪ドル(286億160万円:1豪ドル=104.96円(注1)、20/21年度比47.3%増)となり、20/21年度からの3カ年度で大幅に増加している(表1)。部門別に見ると、小売部門はインフレなどを要因として1億4890万豪ドル(156億2854万円、同3.3%減)と減少する中で、外食部門は1億2360万豪ドル(129億7306万円、同4.0倍)と大幅に増加し、19/20年度からの年平均成長率では58.6%増と急激に拡大している。一方、22/23年度の同食品の経済的貢献額は4580万豪ドル(48億717万円、同9.1%減)、雇用のフルタイム当量値も466.6FTE(注2)、同14.7%減)といずれも減少している。この要因についてフード・フロンティアは、投資や助成金の不足、製造コストや人件費の上昇、消費者支出の減少を挙げている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。
(注2)1人のフルタイム社員が1週間に処理できる仕事量を示すもの。例えば1日8時間労働で週5日間勤務する場合、1年間のFTF量は2080時間(40時間/週×52週)となる。
州別の同食品業界の経済的貢献については、雇用も含め、豪州の東部州がその大半を占めており、特にニューサウスウェールズ州では貢献額、雇用ともに全体の約半数を占めている(表2)。
同様に、同食品の原料供給事業者および製造事業者も東部州に集中している。19年は製造事業者が10社のみであったが、24年4月時点では原料供給事業者が7社、製造事業者が22社の計29社と増加している(図)。また製品数も20年は90品目未満であったが、24年1月時点では275品目に拡大している。
他方で、植物由来食肉様食品の価格は食肉製品と比べて高い。特にベーコンに似せた植物由来食肉様食品は、食肉製品と比べて83.0%も高く、ハンバーガー様食品も同63.4%高いなど、平均すると食肉製品に比べて32.8%高い価格で販売されている(表3)。しかしフード・フロンティアは、20年調査時は植物由来食肉様食品の方が食肉製品に比べて平均で49%も高かったことから、その価格差は年々縮小してきているとしている。これは、同業界のサプライチェーンの再編統合や垂直統合型の生産体系構築などにより、企業努力で経費削減を図ってきているとしている。
またフード・フロンティアは、本報告書を補完するものとして、今後10年間の植物由来食肉様食品業界の3つのシナリオを整理した将来見通しに関する報告書も、同時に発表している。シナリオは、(1)消費者の選択に委ねる保守的な見通し、(2)研究開発とインフラ投資を拡大し、食肉消費量が減少する見通し、(3)植物由来食肉様食品が大衆化するという最も積極的な見通しとして、それぞれ試算している。このうち、シナリオ(2)は最も実現可能性が高いとしており、この場合、32/33年度の経済的貢献額は5億8200万豪ドル(610億8672万円、22/23年度比12.7倍)、雇用は6063.0FTE(同12.7倍)と、いずれも大幅に増加する楽観的な見通しとなっている(表4)。
フード・フロンティアによると、今後は植物由来食肉様食品の品質向上や低価格化に貢献する技術開発、加工施設建設のためのコンソーシアムまたは官民パートナーシップによる共同投資が必要だとしている。また、同食品の味や利点に対する消費者の理解醸成と、フレキシタリアン(準菜食主義者)に対して、いかにして同食品の消費を定着させるかが重要であるとしている。
【調査情報部 令和6年5月22日発】
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