豪州で4年ぶりとなる高病原性鳥インフルエンザが発生(豪州)
豪州ビクトリア州の州都、メルボルンから西に約100キロメートルのメレディスにある採卵鶏農場で2024年5月22日、高病原性鳥インフルエンザ(H7N3亜型)が発生した(図1)。当該農場の半径5キロメートルの制限区域では、家きんや生産物などの移動制限措置のほか、半径20キロメートルの管理区域では、家きんや生産物の移動が許可制になるなどの移動規制が執られている。また翌23日には、メルボルンから西に約210キロメートルのテランにある採卵鶏農場でも、同じH7N3亜型の高病原性鳥インフルエンザが発生し、当該農場の半径1.5キロメートルの制限区域と、半径15キロメートルの管理区域が設定され、検疫監視下に置かれている。
現地報道によると、これら発生農場は同じ所有者のものであるとされ、農場管理者や関係事業者によるウイルスの伝播が疑われている。また、今般の発生により、50万羽以上の採卵鶏が殺処分されたとしている。
本発生を受け、発生同日の22日、豪州連邦政府はビクトリア州における対応支援を含む緊急家畜疾病対応計画を策定し、同州の関係機関とともにウイルスのまん延防止と封じ込めに取り組んでいる。
ビクトリア州農業省によると、豪州では1976年から2020年にかけて、合計9件の高病原性鳥インフルエンザが発生している。直近の発生である20年には、同じくビクトリア州の採卵鶏農場で高病原性鳥インフルエンザ(H7N7亜型)が3例発生したが、その後の防疫措置により、21年2月26日に国際獣疫事務局(WOAH)から清浄国として認定されている。
豪州では、鶏肉は年間約140万トン(正肉ベース)、鶏卵は同約3億8000万ダースが生産されおり、直近10年間では増加傾向で推移している(図2、3)。
近年、日本は豪州から家きん肉などの輸入をほぼ行っていないが、18年までは冷凍丸どりなどが一定量輸入されていた(表)。今回の発生により、日本の農林水産省は5月22日、豪州からの生きた家きん、家きん肉などの一時輸入停止措置を講じている。
このような中で、西オーストラリア州でも5月23日、低病原性鳥インフルエンザ(H9N2亜型)が採卵鶏農場から検出されたほか、22日付の現地報道によると、国外から帰国した豪州人がH5N1型の鳥インフルエンザに罹患したとされている(その後回復したとされる)。ただし、これらはビクトリア州で発生した鳥インフルエンザとは無関係であるとしている。
豪州連邦政府およびビクトリア州農業省は、家きんやその他鳥類の飼養者に対し、鳥インフルエンザの疑似患畜を発見した場合、速やかに緊急家畜疾病ホットラインに通報することや、消費者に対し、流通している鶏肉および鶏卵は安全であることを呼びかけている。
【調査情報部 令和6年5月29日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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