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NZの2024/25予算案、新たに地域インフラ基金などを計上(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)政府は5月30日、2024/25年度(24年7月〜25年6月)の予算案を発表した。このうち農業関係では、継続的な予算として、気候変動対応基金(CERF:Climate Emergency Response Fund)(注1)を通じた農業の温室効果ガス(GHG)排出削減に関する研究開発への支援や、持続可能な第一次産業の発展を支援するための基金への充当が措置されている。
 また、関連の新規予算としては、洪水への対応など地域インフラの整備を目的とした地域インフラ基金(Regional Infrastructure Fund)に3年間で12億NZドル(1176億円:1NZドル=97.96円(注2))、昨年、同国で発生した気象災害からの道路復旧に4年間で9億3925万NZドル(920億円)が措置されている。加えて、NZ政府の資源管理改革(注3)を実現するための予算や、インフラ庁の創設(注4)に関する予算が計上されており、インフラ投資を加速させ、気候変動に対する適応力の向上を図っていくことを見据えた予算案となっている。
 一方で、これらの関連する予算を除き、NZ第一次産業省が計上している24/25年度(単年度)の農業関係予算の合計額は、11億5989万NZドル(1136億円、前年同期比13.3%減)である。
 主な関係予算の詳細は以下の通り。なお、各予算額は今後4〜5年間の総額となるが、4には23/24年度予算執行確定分が含まれる。
 
(注1)2021年にNZ政府が設立した気候変動がもたらす問題に対応するための基金。排出量取引制度(ETS)を通じて得られた収益が基金に充当される仕組みとなっていたが、今回の予算案の公表と併せて、この慣行を廃止し、通常の予算策定の中で検討していくことが発表された。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
(注3)【海外情報「ニュージーランド政府、資源管理法改正案の概要を発表」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003782.html)】をご参照ください。
(注4)国民党(現政権)の公約の一つ。中央政府におけるインフラ資金の調整や国内外の投資家と案件を結びつけるハブ的な役割の中心を担うことが想定されている。

1 農業のGHG排出削減に関する研究開発の推進

(3億5326万NZドル:346億円)
 GHG排出削減のための研究開発や技術革新、農場でのGHG排出削減を円滑に進めるための市場の整備などを支援する。同予算によって2022年に設立された農業排出に関する気候変動対策センター(CCAEE:Centre for Climate Action on Agricultural Emissions)(注5)が主導し、メタンワクチンの開発(注6)など、複数の業界主導のイノベーションプロジェクトが進行している。

(注5)研究開発投資を通じて農家のGHG排出削減を支援するため、2022年に設立。官民それぞれの出資が50:50の合弁会社の形となっており、主に研究開発の部門であるNZ農業温室効果ガス研究センターと実用的な機器の開発や商業化を推進する部門であるAgriZeroNZからなる。
(注6)家畜の唾液や消化管内に生息するメタン生成微生物をターゲットとして、その活動を抑制する抗体を誘発するワクチン。完成すれば、低コストかつ大規模にメタンを削減することができるとされている。

 

2 持続可能な食品と繊維の未来基金

(4億0272万NZドル:395億円)
 NZの第一次産業の持続可能な発展を支援するための基金。業界団体などと共同出資する形で、木質バイオマスの利活用や家畜の真菌性皮膚症の迅速診断技術の開発など、さまざまなプロジェクトに投資を行っている。

3 地域インフラ基金の創設

(12億NZドル:1176億円)
 同基金は、地域経済の回復力を高め、生産性を向上させ、成長させるためのインフラに投資するものとされている。NZ政府は、今後5年間のインフラへの新規投資額が680億NZドル(6兆5015億円)以上になると予測している。

4 気象災害からの復興支援(道路復旧分)

(9億3925万NZドル:920億円)
 2023年初頭にNZの北島で発生した気象災害(サイクロンと洪水)後の州道と地方道ネットワークの復旧、対応、再構築を支援する。災害復旧に関する予算はこの他にも計上されており、合計10億NZドル(980億円)以上の予算規模となる。

5 資源管理改革の実現に向けた資金

(9224万NZドル:90億円)
 NZ政府の資源管理改革を実現するために計上された予算であり、資源管理法(RMA)の改正や国の方向性の検討などを支援する。新たな資源管理システムの継続的な運用のための資金は、数年後に別途措置するとしている。

参考

表 2024-25年度の主なNZの農業関連予算パッケージ(今後5年以内に実施)
【渡部卓人 令和6年6月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532