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米国食品医薬品局、乳牛の温室効果ガス排出量を削減する飼料添加物を承認(米国)

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 米国食品医薬品局(FDA)は5月24日、動物用医薬品の販売などを行うエランコ・アニマル・ヘルス社から申請のあった乳牛のメタン排出を抑制する飼料添加物に関し、泌乳中の乳牛に使用するに当たって生乳の安全性と乳牛のメタン排出抑制の有効性の要件を満たしているとして、飼料添加物としての利用を承認したことを公表した。

 この飼料添加物は、有機化合物である3−ニトロオキシプロパノール(3−NOP)を主成分としており、牛の第一胃で温室効果ガス(GHG)のメタンを生成する酵素を阻害することで、乳牛のメタン排出を抑制するとされる。泌乳中の乳牛1頭につき1日大さじ1杯を給与することで、メタン排出量を約30%、二酸化炭素換算で年間約1.2トン相当を削減できるという。同社は23年6月、FDAに対して製品の安全性、有効性に関する審査を申請していた。
 同社のシモンズ社長は、「この飼料添加物の承認は、全米の酪農家に炭素市場などから新たな収入源をもたらすとともに、食品企業が消費者ニーズに応え、持続可能性に取り組むのを支援するだろう」と述べた。試算によると、酪農家が牛乳1ガロン(3.79リットル)当たり数セントの追加費用で、炭素市場や米国農務省、州政府の保全プログラムを通じて搾乳牛1頭当たり年間20ドル(3155円:1米ドル=157.74円(注1))以上の収益を得られるとされる。米国は、COP26(注2)において2030年までにメタン排出量を20年比で30%削減するとの目標を掲げており、米国農務省は「飼料添加物の給与は牛のメタン排出量を削減する最も簡単な方法の一つである」としている。
 全米生乳生産者連盟(NMPF)は5月28日、今回の承認について賛意を表明した。NMPFのダウド会長は、「今回の承認は持続可能性に取り組む生産者が報われるばかりか、国際市場における米国乳製品の競争力維持にも役立つだろう」と述べた。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
(注2)国連気候変動枠組条約第26回締約国会議。2021年10月31日から11月13日にかけて英国グラスゴーにて開催され、メタンの削減目標については米国、EU、日本を含む103か国が合意した。メタンは二酸化炭素に比べて温室効果が28倍と高い一方、大気中で分解されるまでの期間は約10年と短く削減効果が高いことから、削減対象として注目されている。
【小林 大祐 令和6年6月10日発】
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