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ドイツの飼養豚で約1年半ぶりにアフリカ豚熱を確認(EU)

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 ドイツ北東部のポーランドと接するメクレンブルク・フォアポンメルン州は2024年6月6日、同5日に同州の養豚場でアフリカ豚熱(ASF)の発生が確認されたと発表した。
 ドイツの養豚場でASFの発生が確認されるのは23年2月以来であり、同州では21年11月以来となる(表1)。
表1
 今回、ASFの発生が確認されたのは、メクレンブルク・フォアポンメルン州グライフスヴァルトの肥育農場で、飼養規模は3500頭とされ、同州によると6月8日までに全頭殺処分された(図)。
 今回のASF検査を行ったフリードリッヒ・レフラー動物衛生連邦研究所(FLI)によると、現時点で感染経路は不明とされているが、同地区の獣医事務所長は、同州では22年10月以来、野生イノシシでもASFの発生が確認されていなかったことを踏まえて、人を介して飼養豚に感染した可能性があると述べている。同州では、ポーランドとの国境沿いなどに総延長136キロメートルの野生イノシシ侵入防止柵を設置するなどの対策を行っており、同州のバックハウス農相は、これらの対策により野生イノシシからのASFの感染を防いでいるとしている。
図
 今回のASF発生により、発生農場から半径3キロメートルの保護区域と同10キロメートルの監視区域が設定され、これらの区域内での豚の移動やと畜が禁止される。現地報道によると、これによる経済損失は80万ユーロ(1億3702万円:1ユーロ=171.28円(注))に上るとされている。
 ドイツ養豚生産者協会(ISN)のシュターク博士は、「ASFの発生により生産者や監視区域内の生産者や食肉企業にとっては大きな影響があるものの、これまでの経験から専門的な管理措置を迅速に行うことができる」と述べた。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。

23年は東欧を中心にASFが拡大

 欧州食品安全機関(EFSA)が2024年5月16日に発表した報告によると、23年のEUのASF発生件数は14年以来最多となり、スウェーデンやクロアチアなどでは新たにASFの発生が確認された(表2)。また、21年以降ASFが発生していなかったギリシャや過去に発生のない新たな地域でASFの発生が確認されたイタリアなど、地域的な広がりも続いている。メクレンブルク・フォアポンメルン州が国境を接するポーランドでは、23年に野生イノシシでのASFの発生が2686件に上り、これはEU域内の同発生件数の34%に相当する。一方、23年の飼養豚でのASF発生件数の96%がクロアチアとルーマニアであり、他の加盟国では飼養豚での発生は散発的であったされている。
表2
【藤岡 洋太 令和6年6月11日発】
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