選挙前に各地で頻発した生産者によるデモを受け、共通農業政策(CAP)における環境要件の緩和措置が導入される
(注)など、環境規制の面で一時、ブレーキが踏まれる格好となった。今回の選挙で、各政党グループの農業に関する主なマニュフェストは表2の通りであり、持続可能性の必要性には言及しつつも、生産者の所得確保などに配慮する姿勢が多くの政党グループに見られたのが特徴である。
最大勢力を維持したEPPは、生産者との対話を重視するとし、持続可能性に取組む生産者にインセンティブを付与することや、生産者に対する過剰な要求・義務には反対する姿勢を打ち出していた。S&Dも、生産者の所得確保や食料安全保障への投資を掲げた。右派のECRは、持続可能性の必要性は肯定しつつも、農業生産とのバランスが重要とのマニュフェストを掲げ、CAPとFarm to Fork戦略を見直すとしている。また、極右のIDは、マニュフェストは公表していないが、従来から環境政策には批判的で保守的な立場をとっている。環境親和を重視する政策に批判的な右派勢力が躍進したことで、今後のEU農業政策の動向が注目されている。
(注)海外情報「EU理事会、共通農業政策における環境要件の緩和を承認(EU)」をご参照ください。