畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2024年 > 欧州議会選挙、現連立3会派で過半数維持も現環境政策に批判的な勢力が伸長(EU)

欧州議会選挙、現連立3会派で過半数維持も現環境政策に批判的な勢力が伸長(EU)

印刷ページ
 欧州議会選挙の投票が6月6〜9日、27のEU全加盟国で行われた。欧州議会が公表した6月10日16時(現地時間)時点の結果(暫定)によると、フォンデアライエン欧州委員会委員長率いる中道右派の欧州人民党(EPP)グループは議席を10伸ばし、最大勢力を維持した(表1)。中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループは議席を4つ減らしたものの第2政党を維持、親EU・中道派の欧州刷新(Renew)グループは議席を23減らしたが、第3政党の座を死守し、現在の連立の組み合わせであるこの3会派で議席は減らしながらも過半数を維持した。
 他方、右派の欧州保守改革(ECR)は4議席増の73で第4政党に躍進し、極右政党のアイデンティティと民主主義(ID)も9議席増の58で第5政党になった。また、無所属が改選前の62議席から100議席に増えており、この中には右派勢力が相当数含まれる。一方、選挙前第4政党であった環境政党の欧州緑の党・欧州自由同盟(Greens/EFA)グループは18議席減の53となり、第6政党に後退した。なお、今回の欧州議会選挙における議席数は720議席と改選前から15議席増加している。
 欧州議会は、EUの主要機関の1つであり、各加盟国によって構成されるEU理事会(閣僚理事会)と並ぶEUの立法機関である。税制など一部の分野を除くEUの法案や予算案は、両機関の採択により成立する。議員の任期は5年となる。
表1

各政党グループによる農業関係の主なマニュフェスト

 選挙前に各地で頻発した生産者によるデモを受け、共通農業政策(CAP)における環境要件の緩和措置が導入される(注)など、環境規制の面で一時、ブレーキが踏まれる格好となった。今回の選挙で、各政党グループの農業に関する主なマニュフェストは表2の通りであり、持続可能性の必要性には言及しつつも、生産者の所得確保などに配慮する姿勢が多くの政党グループに見られたのが特徴である。
 最大勢力を維持したEPPは、生産者との対話を重視するとし、持続可能性に取組む生産者にインセンティブを付与することや、生産者に対する過剰な要求・義務には反対する姿勢を打ち出していた。S&Dも、生産者の所得確保や食料安全保障への投資を掲げた。右派のECRは、持続可能性の必要性は肯定しつつも、農業生産とのバランスが重要とのマニュフェストを掲げ、CAPとFarm to Fork戦略を見直すとしている。また、極右のIDは、マニュフェストは公表していないが、従来から環境政策には批判的で保守的な立場をとっている。環境親和を重視する政策に批判的な右派勢力が躍進したことで、今後のEU農業政策の動向が注目されている。
 
(注)海外情報「EU理事会、共通農業政策における環境要件の緩和を承認(EU)」をご参照ください。
表2
【調査情報部 令和6年6月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527