畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2024年 > 生乳需要の低迷を受け2024/25年度当初乳価を引き下げ提示(豪州)

生乳需要の低迷を受け2024/25年度当初乳価を引き下げ提示(豪州)

印刷ページ
 豪州の乳業各社や酪農協は、「酪農業界における行動規範(Dairy Code of Conduct)(注1)」に基づき、2024/25年度(7月〜翌6月。以下、「新年度」という)の当初乳価を発表した。
 乳業各社の発表や報道情報によると、新年度は生乳生産量増加の見通し(注2)や消費者の買い控えなどを受け、大手乳業各社が提示する乳価は、いずれも前年度からおおむね1割安となった(表)。
 今回の乳業各社の発表を受けて、豪州酪農家連盟(ADF)のベネット会長は、乳価の下落は生産基盤を弱体化させ、ひいては乳業の弱体化につながると警鐘を鳴らしている。一方で、個々の生産者は一定の落ち着きを見せている。この背景には、豪州農業資源経済科学局(ABARES)やオランダの農協系金融機関ラボバンクが、事前に新年度乳価の下落予測を公表していたことがあるとされている。また、昨年度と同様に当初乳価の発表から取引が開始される7月までの間に、乳業各社が他社提示額と比較検討して乳価の引き上げを行う可能性があることから、その動向を注視しているとみられる。
 
(注1)酪農業界における行動規範に基づき、乳業各社などは毎年6月1日までに、次年度の生産者支払乳価など取引条件を公表することが義務付けられている。
(注2)豪州の酪農業界団体であるデイリーオーストラリア(DA)は、2024年5月に最新の業界見通しを公表しており、その中では、24/25年度の生乳生産量を83億5000万リットル(前年度比:2.8%増)と予測している。
表 豪州主要乳業各社の当初乳価(6月1日時点)
 乳業各社の提示額を見ると、豪州最大手のサプート・デイリー・オーストラリア社(表中の「豪州サプート社」)は、新年度当初乳価を生乳の固形分1キログラム当たり8.00〜8.15豪ドル(850〜865円:1豪ドル=106.1円(注3)、前年度比8.4〜11.6%安)としている。また、ニュージーランドの乳業最大手フォンテラ社(注4)の豪州法人である豪州フォンテラ社は、同8.00豪ドル(850円、同7.5%安)としている。前年度を下回る要因として、両社ともにチーズなどの輸入乳製品の台頭による国内在庫の増加や、国際乳製品相場の軟化を挙げており、豪州乳製品の競争力を確保するためにはやむを得ない選択であるとして、生産者に理解を求めている。
 このほか、豪州資本でチーズ生産を主体とするベガ社は同7.90〜8.20豪ドル(838〜870円、同6.8〜10.2%安)、フランス資本で世界最大の乳業ラクタリス社の豪州法人の豪州ラクタリス社は同8.40豪ドル(891円、同3.1%安)、中国大手の蒙牛乳業傘下のバラ社は同8.00〜8.50豪ドル(850円〜902円、同0.0〜11.1%安)などとなっている。
 
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
(注4)ニュージーランドのフォンテラ社の当初乳価については、【海外情報「フォンテラ社、23/24年度乳価の据え置きと24/25年度当初乳価を発表」】をご参照ください。
 

 通常、豪州の乳価は、乳質や出荷量などに応じて、出荷月ごとの生乳の固形分1キログラム当たりの単価が設定されているが、ここでは全体像を示すため、乳業各社の発表や現地報道をもとに、24/25年度当初の平均的な同単価水準を示している。また、豪州の乳価情報などを一元的に提供するミルクバリューポータル(注5)では、乳価水準の決定方法に関する情報が掲載されている(図)。

(注5)乳製品の加工業者、販売業者などを代表する業界団体である豪州乳製品連合会(ADPF)が運営するポータルサイト。乳価の透明性を高めることを目的に、地域や成分などに応じた平均的な乳価を試算できるツールなどが掲載されている。
図 乳業における乳価決定の原則と乳価の構成要素
【渡部卓人 令和6年6月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532