アスパラゴブシス(日本では通称「カギケノリ」)
(注4)を利用した飼料添加物を販売しているCH4グローバル社のメラーCEOは、5月23日に開催された改正法案を審議している特別委員会の場で、「2022年からACVM法による規制がメタン生成抑制剤に適用されてから、どの企業も申請手続きすら着手していない。この改正の機会に規制を緩和しなければ、NZは温室効果ガス(GHG)削減の分野で世界から立ち遅れる」と、法案の改正に当たって意見を述べている。
これに対し、NZ食品安全局のアーバックル副局長は、新聞報道を通じて「今回の措置は2012年に中国に輸出したラクトフェリンから基準値を超える硝酸塩が検出され、貿易上のリスクが生じたことが契機
(注5)となっている。20年に実施した抑制剤の規制に関するパブリックコメントでは、ほぼすべての回答で規制への強い支持が得られた」とコメントを発表し、関係者に理解を求めている。また、23年に国連食糧農業機関(FAO)から発表された抑制剤の食品安全への影響に関する報告書を引用し、飼料添加物で利用されるアスパラゴブシスなどの海藻類には、人に対する発がん性の可能性があるブロモホルム
(注6)が含有しているなど、潜在的な食品安全への影響に対して今後十分な評価が必要であるとし、改めて抑制剤の利用に慎重な姿勢を示し法案提出の趣旨を説明している。
(注4)「畜産の情報」2023年3月号「豪州およびニュージーランドの畜産業界における持続可能性 〜気候変動対策を中心に〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002629.html)をご参照ください。
(注5)肥料への添加や放牧地に直接散布することで、土壌中の微生物の働きを抑制し、亜酸化窒素の排出を抑制することができる硝化抑制剤ジシアンジアミド(DCD)を利用していたことが残留の要因と報告されている。
(注6)海藻によってつくられる臭気化合物。反芻(はんすう)動物の飼料添加物として利用した場合、メタン生成を阻害する効果があるとされている。