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肥育・と畜向け生体家畜の輸出を禁止(英国)

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 英国政府は2024年5月20日、肥育およびと畜を目的とした英国からの生体家畜(牛、豚、羊、ヤギ、馬)の輸出を禁止する法律の成立を公表した。
 同日付のプレスリリースでは、この法律により家畜が長期輸送によるストレスや疲労などから解放され、福祉基準の高い英国内でと畜されることが保証されるとした。また、英国の食肉の価値を高め、経済成長にも貢献するとしている。
 なお、繁殖や競技会などの特定の目的による生体の輸出は、アニマルウェルフェアに関する要件に沿って輸送されることを条件に、引き続き許可される。

英国からの生体輸出頭数

 英国からの繁殖用を除く牛および豚の輸出頭数は、年による変化はあるものの、英国の飼養頭数(注1)に占める割合は非常に小さい(表1)。そのため、今回の輸出禁止による食肉需給への影響は限定的という関係者の見方もある。
 
(注1)英国の家畜飼養頭数は、牛631万頭、豚426万頭(23年6月時点。繁殖用を除く。)。
表1

関係団体の反応

 英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)や英国獣医師会などは、この法律の成立を歓迎した。RSPCAは声明で、「現代史におけるアニマルウェルフェアにとって最大の日の一つ」と絶賛し、他の国も追随することを望むと述べた。
 一方、全英農業者組合(NFU)は法律の成立前に公表した声明の中で、家畜の生産者価格などへの影響を懸念した。英国からの生体輸出額は食肉と比較すればわずかであるものの、国内飼養頭数が増加した際の調整弁として輸出機能があるからである。

英国消費者の食肉購入時の重要項目調査

 英国ポーツマス大学などからなる研究グループが、2021年11月に英国を含む5カ国の消費者を対象に実施した食肉購入時に重要視する項目に関する調査(注2)を実施した(表2)。これによると、英国での「アニマルウェルフェア」に対する関心は、「新鮮さ」、「品質/味」に次ぐ第3位であった。また、24年1月に英国の食料品流通研究所が行った調査でも消費者の84%が、アニマルウェルフェアを購買時の重要な要素の一つとみなしており、消費者の関心の高さがうかがえる。
 
(注2)英国、チェコ、スペイン、スイス、スウェーデンの5カ国の消費者3192人に対して、食肉と乳製品購入時に重要視する18の項目を5段階評価で調査したもの。このうち、英国の食肉購入時の調査対象者は561人。
表2
【調査情報部 令和6年6月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397