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EU農業生産者団体、ジャガイモ疫病対策としての行動計画を公表(EU)

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最終更新日:2024年6月17日

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は5月30日、EUのばれいしょ生産が危機的状況にあるとし、ジャガイモ疫病(Phytophthora infestans)対策の必要性を訴える声明および行動計画を公表した。
 同声明によれば、ジャガイモ疫病菌が葉と塊茎の両方に感染すると、1〜2週間で作物を全滅させる可能性があり、ばれいしょにとって最も破壊的な病気であるとしている。19世紀には、アイルランドで「ジャガイモ飢饉」とも呼ばれる大飢饉の原因にもなり、同病害によるEUの年間経済損失額は約9億ユーロ(約1542億円:1ユーロ=171.28円(注1))とも推計されている。
 今回の声明には、限られた殺菌剤の多用により薬剤耐性菌が出現したことから、有効な殺菌剤が減少し、既存の総合的病害虫・雑草管理(IPM)(注2)では対応できなくなりつつあるという背景がある。すでに11種類の主要な殺菌剤の作用機構のうち、4つで耐性菌が確認されており、将来的には残りの作用機構に対する耐性も獲得する可能性があるとしている。また、新たに強力な菌株が急速に拡大していることから、天候不順の影響により一部地域で作付遅れが発生しているEUのばれいしょ生産に更なる打撃となる可能性がある。
 同声明では、同病害が2024年の栽培期を前にすでにいくつかの地域で重大な脅威となっており、ばれいしょ業界として短期的および長期的な解決策が緊急に必要であるとして、同病害対策の行動計画を提示している。
 行動計画の主な内容は、(1)短期的な解決策として、業界関係者の対話型プラットフォームの創設とIPM戦略に関するコミュニケーションの強化、(2)中期的な解決策として、作物の防疫部門、育種家、研究者、生産者による課題解決に向けたより密接な協力体制の構築を提案している。また、同病害の拡大を抑制する最も効果的な方法として、効果的な植物保護製品(農薬)の使用と異なる抵抗性遺伝子が組み合わさった抵抗性品種の併用、さらに、最良な農業管理技術を推進することであるとしている。

(注1):三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
(注2):総合的病害虫・雑草管理(IPM)とは、利用可能なすべての防除技術について、経済性を考慮しつつ慎重に検討し、病害虫・雑草の発生増加を抑えるための適切な手段(予防的措置、判断、防除)を総合的に講じるもの。
参考
【福寿 悠星 令和6年6月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
Tel:03-3583-8609