EU産豚肉に対する中国のアンチダンピング調査が開始(EU)
中国商務省は6月17日、EU産豚肉とその副産物に対するアンチダンピング(AD)調査を同日から開始すると発表した。(対象となる品目の関税分類番号は表2の注1)
ダンピング調査対象期間は2023年1月1日から同年12月31日まで、国内産業の損害調査の期間は20年1月から23年12月までとし、25年6月17日までには同調査を終了する予定(特殊な事情がある場合は半年間の延長可能)とされている。
EUにとって中国は最大の豚肉および豚副産物の輸出先国であり、23年の輸出量は122万トンと全体の約3分の1を占めた(表1)。また中国にとってもEU各国は主要な輸入先国となっており、23年は輸入量第1位のスペイン(シェア22%)を始めとし、輸入量上位10カ国中にEU加盟国は5カ国が入っている(表2)。
EU側の反応
現地報道によれば、欧州委員会の報道官は本件について、「我々は心配しておらず、中国政府によるAD調査がWTOのルールの下で適切に実施されるよう確認していく」と語っている。
EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は6月17日に声明を公表し、他の産業部門の係争(EUが中国製EV(電気自動車)に課す暫定的な相殺関税措置)が農業部門に影響することについて遺憾であるとした。また、EUからの中国向けの豚肉関連製品の輸出は、中国の豚肉生産の増加に伴い減少傾向にあるものの、依然として副産物輸出の面で非常に重要な輸出先であり、今回のAD調査はスペイン、オランダをはじめとする生産国への影響・負担が考えられるため、欧州委員会による生産者の支援が必要とした。
欧州家畜食肉貿易業者連合(UECBV)も6月19日にプレスリリースを公表した。その中で、現在、アフリカ豚熱により中国向け輸出ができない国々は、副産物輸出などに関して代替市場を見つけることが難しく、低価格での輸出を余儀なくされているため、中国市場に対する欧州産豚肉製品のダンピングはないとした上で、中国との互恵的な関係を継続し、今後も欧州産の高品質で持続可能な豚肉製品を中国の消費者に提供することを望むとしている。
【調査情報部 令和6年6月21日発】
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