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米国農務省、ミシガン州の乳牛・家きんのHPAI感染に関する調査を公表(米国)

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 米国農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)は6月13日、ミシガン州における乳牛および家きんの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)感染に関して、感染の経路に関する疫学調査の結果をまとめた報告書を公表した。同報告書によると、ミシガン州での感染はテキサス州からHPAIに感染した乳牛が持ち込まれたことで発生し、その後、乳牛やヒト、車両など複数の経路を通じて州内の酪農場や養鶏場に拡大した可能性が高いとされている。
 
 乳牛のHPAI感染は3月25日、テキサス州およびカンザス州で初めて確認され、3月29日にはミシガン州の乳牛での感染が確認された(注1)。6月24日までに公表された情報によると、米国における乳牛のHPAI感染は12州で121件が確認されており、このうちミシガン州は25件と全体の約2割を占めている。
 今回の報告書は、5月中旬までにミシガン州でHPAIへの感染が確認された15の酪農場および8の養鶏場を対象に行われた調査結果となる。報告書の中では、感染拡大の経緯は下記によるものと推定されている(図)。
 
1.2023年12月、テキサス州で野鳥から乳牛へHPAIが感染(注2)。その後、感染した乳牛が他の8州に出荷されるなどで感染が拡大
2.24年3月8日、HPAIに感染した乳牛がテキサス州からミシガン州へ持ち込まれる
3.ミシガン州内の酪農場および養鶏場でHPAIの感染が拡大。遺伝子解析および疫学調査の結果、渡り鳥から各農場に直接感染した可能性は低いとされ、ヒトや車両など複数の経路により感染が広まったとされた
図 ミシガン州における乳牛および家きんへのHPAI感染拡大の経緯
 このうち、3については(1)酪農場の従業員やその家族を通じた感染(2)車両など共有設備を通じた感染(3)業者などの訪問者を通じたものが、感染の要素として考えられるとされ、該当する酪農場の割合が要素ごとに示された(表)。
表 ミシガン州における酪農場のHPAI感染経路として考えられる要素
 米国では、連邦命令により4月29日以降、搾乳用の乳牛が州をまたいで移動する際には、遺伝子検査の実施が義務付けられている。ただし、今回調査対象となった15の酪農場のうち、9農場では新たな乳牛の導入が行われていなかったため、乳牛の移動以外の事由が感染の要因とみられるとの指摘がなされた。USDAは、乳牛のHPAI感染予防として、検査の強化や、動物福祉に影響しない(注3)範囲での州内家畜の移動制限に加え、感染経路となる要素を特定し、バイオセキュリティを強化することが大切としている。
 (注1)「乳牛への鳥インフルエンザの感染事例が確認、公衆へのリスクは低い(米国)」「乳牛でのHPAI感染エリアが拡大、当局は各種対策を実施(米国)」も併せてご参照ください。
(注2)遺伝子解析により、今回の感染拡大において野鳥による感染はこの1回のみの可能性が高いとされている。
(注3)ミシガン州では、繁殖から育成まで一貫して行っていない酪農家もあり、農場間での乳牛の移動が一定程度行われている。この場合、移動制限は現実的でないため、事前の検査による対応が効果的としている。
【小林 大祐 令和6年6月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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