上海で開催された国際肉類大会、業界関係者による講演(中国)
中国有数の総合食品展覧会であるSIAL・上海(フランスの展示ビジネス会社主催)が2024年5月28〜30日の日程で開催され、初日の28日に、主催者がその併設イベントとして国際肉類大会を開催した。
同大会では、オランダの農協系金融機関ラボバンク、ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)のほか、中国農業科学院の専門家や牛肉輸入事業者などが講演を行った。以下に、それぞれの講演概要を紹介する。
(1)ラボバンクグローバル戦略アナリスト
世界全体で食肉の消費量が伸びている。「増加率は落ち着いているが、増加基調にある」ということが大切である。この消費量の伸びに貢献しているのが中国であり、中国の消費者の消費のけん引力は無視できないものとなっている。中国の食肉消費は世界の潮流を後追いしており、今後も伸びると見込まれる。
近年、国際社会で発生した衝突や大国間の緊張関係の高まりの中にあって、中立国であるブラジルの存在感が増している。ブラジル政府は今後も食肉の貿易を拡大する方針で、輸出先へのアプローチを強化しており、中国とブラジルの関係に注目する必要がある。
食肉の消費動向を予測する際は、食肉製品のみならず大豆など主要な農産物を含め、各国の食料の安全性に関する政策がどうであるかといった見方も含めて市場を観察することが重要である。
(2)中国農業科学院農業経済および発展研究所首席専門家
2023年の中国の豚肉生産量は5700万トンを超えたが、妥当な消費量は輸入量を含めて5500万トン以下である。中国の豚肉は価格競争力がないため、過剰生産となっても輸出ができない。1人当たりの消費量は23年の42.2キログラム(豚肉生産量を総人口で割った数)が限界であり、輸入量を含めて5500万トンを超える量を生産すると養豚事業者は赤字となるため、これ以下の生産量に抑える必要がある。
これまでの中国の豚肉生産には、06年の豚耳青病(注)の発生の頃から数年ごとに増減の周期があった。これは、疾病が発生し、飼養頭数が減り、コスト割れが起こることによって生産量が減少する、という周期である。これを、疾病の発生により生体豚が減り、生産量が減少する、という単純な周期と誤解する者が多いが、そうではない。中国では18年以降大きな疾病が発生していないため、過去の疾病発生の周期に照らせば、近く生産量の減少につながるような疾病の発生があってもおかしくない。このことを忘れずに、疾病に備えていくことが必要である。
消費に視点を当てると、中国の豚肉消費には季節性が強いという傾向がある。すなわち、2月から4月までの消費は弱く、5、6月から消費が増え、消費のピークは(春節前の)年末、ということである。今後の豚肉価格を予測する際、消費が弱いはずの2月から4月に豚肉価格が上向いていたということは、今年は5、6月からの豚肉価格はさらに上昇していくことになる。近年、問題となっている豚肉価格の低迷については、今後の市場動向は明るいものと考えられる。
(注)豚耳青病:豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の別称。ウイルスの変異速度が速い伝染病で、雌豚の生殖機能障害、子豚と育成豚の呼吸困難が主要な症状。
(3)高級牛肉輸入兼飲食業事業者社長
中国の牛肉消費量は非常に多くなっているが、牛肉について、知識のある消費者はまだ多くない。消費者を育てる観点から、子供たちに何を学ばせるのかということを考えることが必要な時期になっている。
中国の牛肉生産は牧草肥育の牛肉に偏っているが、国内の消費者は穀物肥育の牛肉に対する需要が強い。穀物肥育の牛肉の方が価格もより安定的であり、景気の影響を受けにくい。中国産の牛肉は総じて品質が低く輸入肉に押されている。輸入肉は穀物肥育の物が多く、価格が高いほど売れている。
(4)ブラジル動物性タンパク質協会(ABPA)市場ディレクター
世界の食肉の消費の中心は、東南アジアから東アジアへと移っており、中でも中国の比重が増えている。地域によって輸入したい部位が異なるため、部位ごとに戦略性のある輸出を行うことが重要である。
【調査情報部 令和6年6月27日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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