中国国際乳製品業界大会において政府機関が講演(中国)
中国食品土畜輸出入商会(注1)は6月13日、北京市で中国国際乳製品業界大会を開催した。この大会は、同商会が毎年1回主催し、中国の乳製品貿易に関する外国政府、政府系機関(注2)、中国政府機関および中国企業が参加するもので、各機関の代表者が乳製品や酪農業に関する取り組み内容を紹介するものである。今年は、中国の大手乳業会社である伊利グループが全面的に協賛している。
(注1)同商会は、2001年に「WTOセーフガード協定等及び関税定率法」に基づき、ねぎ、生しいたけなどのセーフガード緊急暫定措置が取られた際の中国側の関係団体であり、中国全国に約4500社の会員(主に農畜産物や木製品の貿易関係)を抱えている。
(注2)外国政府系機関としては、アメリカ乳製品輸出協会(USDEC)/全米生乳生産者連盟(NMPF)がビデオ映像を寄せたほか、ニュージーランド、オランダ、フランス、アイルランドの各大使館担当参事官などが出席し、自国の取り組みを紹介した。
中国の乳製品輸出入状況
中国の乳製品(生乳を除く)の輸入量は、2014年から23年までの10年間で201万トンから291万トンにまで増加した。輸入量が最大となったのは、中国政府が乳製品の消費拡大を積極的に呼びかけたコロナ期間中の21年であり、22年以降は減少傾向にある(図1)。
乳製品の輸入先の構成は比較的安定して推移しており、最大の輸入先であるニュージーランドを筆頭に、オランダ、フランスなどのEU諸国や豪州が上位を占めている(図2)。
このうち、最大の輸入品は育児用調製粉乳や全粉乳などの粉乳製品である(図3)。
中国政府機関代表による基調講演
中国政府からは次の3機関が参加した。主な発言の要旨は以下の通りである。なお、政府機関が行った講演について、司会を務めた本大会の主催者である同商会の副会長からは、「政府からの情報に透明性があり、科学的なものになってきたと感じる。本日のご発言に感謝する」との発言があった。
(1)中国商務部対外外貿易局副局長
中国では、牛乳・乳製品に対して消費者の健康意識の高まりから関心が集まっている。中国の1人当たり乳製品消費量は、いまだ世界水準の3分の1に留まるが、近年急速に伸びている。中国政府は、優良な乳製品が輸入されて消費が多角化することを歓迎する。乳製品については、すでに65の国と貿易が行われており、中国企業にも世界市場に対し、より一層の参画を求めたい。
政府が推奨する、1日1人当たり300グラムの乳製品(牛乳を含む)消費の実現に向けては、拡大の余地が大きい。国内外の関係企業が力を合わせ、中国の消費者の乳製品消費の拡大、さらには全世界の消費者のために、優良な商品を提供していくことを歓迎する。
(2)中国海関総署輸出入食品安全局第三課一級調研員
輸入食品の安全性を確保することは極めて重要な課題であり、食品の安全性確保に向けて、近年、政府関係部署はより緊密に連携している。
食品の中でも乳製品に関する基準は極めて網羅的であるが、6月1日時点で56の国、合計2683の企業がこれらの基準を満たし、中国への輸出施設として登録を終えている。輸入乳製品によく見られる問題を3つ紹介すると、(1)品質(の劣化)、(2)所定の栄養成分不足、(3)輸入証明書の不備や必要書類の不足である。(1)、(2)については中国への輸送時の問題によって商品が劣化している可能性が高く、輸出を行う各社は注意して欲しい。
乳製品の輸出についても紹介する。現在、中国から乳製品輸出が可能な国は東南アジアが多い。これは地理的距離が近いことと、これらの国の輸入基準が比較的低いことによる。ただし、シンガポール、インドネシアはハラールの認証があるため状況は異なる。これらの国と比較して輸入基準が高い欧州諸国、米国などとは引き続き交渉中であるが、米国とは来週オンライン会議を行うことになっており、進展に向けて努力をしている。
(3)中国市場監督管理総局特殊食品安全監督管理局乳児製品登録室室長
(冒頭、2024年2月に施行された育児用調製粉乳に関する国家基準について紹介した上で、)育児用調整粉乳は乳製品全体に占める生産量こそ少ないものの、極めて重要な乳製品の一分類であり、国家主席を始め中国政府が極めて重視している製品である。
最近、この育児用調製粉乳については越境EC(電子商取引)で多くの問題が生じている。このため、主管部署である商務部を中心に、越境ECの場合における育児用調製粉乳の基準の見直しをすべきではないかとの議論が行われつつある。市場に流通した商品の事後管理を担当する市場監督管理総局としても、基準の見直しに協力していく。
中国企業の代表による講演
中国企業を代表して伊利グループ、中国ネスレおよび美賛臣(ミード・ジョンソン・ニュートリション(MJN))が講演を行った。
伊利グループからは、企業戦略として掲げる「養好牛、種好草」(注3)について、中国ネスレからは、伝統的なサプライチェーン管理では時代遅れになっているとして同社が行なっている品質管理の全般的なレベルアップの取り組みについて、美賛臣からは、公益活動に力を入れていること(乳幼児に対してこれまでで累計11億元(241億円:1元=21.91円(注4))に上る募金、物資支援を行なっていることなど)が紹介された。
(注3)「養好牛、種好草」(よく牛を養い、よく草を植え、育てる)とは、「牛」については、中国国内最大の乳牛育種デジタルバンクの整備、最良の種牛の育成および乳牛品種の改良を、「草」については、アルカリ性土壌の改良および適性飼料の開発、地場産飼料の乳牛による消化率の向上および環境保全に資する飼料の開発を指す。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2024年5月末日TTS相場。
【調査情報部 令和6年6月27日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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