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中国農業展望報告(2024−2033)を発表(飼料編)(中国)

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 中国農業農村部は2024年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2024−2033)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は23年の総括と33年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
 本稿では同報告のうち、飼料について紹介する。

1.2023年の飼料需給動向

 飼料の生産量(注1)は10年連続で増加しており、2023年は3億2163万トン(前年比6.4%増(注2))となった(表)。内訳を見ると、畜産の大規模化による需要の拡大から、配合飼料(3億35万トン、同6.7%増)とプレミックス(注3)(709万トン、同8.7%増)はかなりの程度増加し、濃厚飼料(1419万トン、同0.5%減)は前年並みとなった。

(注1)配合飼料、濃厚飼料、プレミックスの生産量の合計。
(注2)同報告の原文では「前年比6.6%増」とされているが、ここでは表中の数値に基づく増減率とした。
(注3)配合飼料の原料として不可欠なビタミンやミネラルなどの微量成分をあらかじめ混合(プレミックス)したもの。
表 飼料の需給動向および見通し
 飼料の消費量は、家畜および家きんの飼養規模が拡大したことで、3億1956万トン(同6.5%増)となった。仕向け先別では養豚向けが1億4856万トン(同10.1%増)、肉用家きん向けが9457万トン(同6.6%増)、採卵用家きん向けが3258万トン(同2.1%増)、反すう動物向けが1659万トン(同3.4%増)と、いずれも増加した。一方、水産向けは、水産業の収益性の低迷を背景に2339万トン(同14.5%減)とかなり大きく減少した。
 飼料原料の輸入量は、国内の需要が増加したことに加え、トウモロコシや大豆などの国際価格が大幅に下落したため増加した。エネルギー源となる飼料原料(トウモロコシや大麦、こうりゃんなど)の輸入量は、5676万トン(同13.5%増)とかなり大きく増加した。このうち、トウモロコシは2714万トン(同31.6%増)、大麦は1133万トン(同96.6%増)といずれも大幅に増加した(図1)。一方、こうりゃんは521万トン(同48.6%減)と大幅に減少した。
図1 飼料原料(エネルギー源)の輸入動向
 たんぱく源となる飼料原料(大豆かすや菜種かす、魚粉など)の輸入量は、961万トン(同20.0%増)と大幅に増加した(図2)。また、大豆および菜種(注4)の輸入量も1億400万トン(同12.4%増)と、かなり大きく増加した。

(注4)大豆や菜種は、国内で搾油し、その残渣(大豆かす、菜種かす)を飼料として利用する。
図2 飼料原料(たんぱく源)および大豆、菜種の輸入動向
 飼料全体の主な輸入先を見ると、ブラジル、米国、カナダ、豪州およびウクライナの5カ国で全体の88.2%を占めた。このうち、ブラジルからの輸入が48.4%(同12.1%増)と急増した一方、米国からの輸入は20.5%(同13.0%減)とかなり大きく減少した。
 飼料の年間平均価格は、世界的な飼料原料価格の下落を受けたものの、依然として高水準を維持し、養豚向けが1キログラム当たり3.90元(85円:1元=21.91円(注5)、同0.5%高)、肉用鶏向けが同3.99元(87円、同2.6%高)、採卵鶏向けが同3.69元(81円、同2.1%高)となった。

(注5)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。

2.2033年までの飼料需給動向予測

 2024年の飼料の生産量および消費量は、家きんおよび反すう家畜の飼養規模拡大が着実に進展する一方、豚の飼養頭数は減少することなどから、3億2146万トン(前年比0.05%減)および3億1939万トン(同0.05%減)と、いずれも前年並みと見込まれている(表)。また、飼料価格は、飼料原料であるトウモロコシや大豆の供給量が十分と予測されることから、緩やかに下落すると見込まれている。
 長期的にもこのような傾向は継続し、養豚向けの飼料需要は減少する一方、家きんおよび反すう家畜向けの飼料需要は着実に増加することで、33年の飼料の生産量は3億3360万トン(年平均1.0%増、基準期間比<21〜23年の平均値からの増減率>10.0%増)、消費量は3億3439万トン(年平均1.0%増、基準期間比10.1%増)と予測されている。また、飼料価格は、飼料原料の自給率が向上し、輸入先の多様化が進むことで安定的な確保が進むことで、家畜・家きんの飼養規模と飼料需要が徐々に安定するため、変動率も縮小すると予測されている。
 今回の展望報告では、前年と同じく飼料原料の輸入量についての展望は示されていないが、今後の見通しに関し注意すべき事項として、(1)中国および世界的な天候不順(例として23年のブラジルでの熱波および米国の干ばつが挙げられている)、(2)国際的なサプライチェーンに影響する政治的もしくは軍事的な諸課題に関するリスク(中東情勢を受けた紅海航路からの迂回など)−などが挙げられている。

【参考】
各畜種などの需給動向および見通しについては、以下をご参照ください。
・海外情報「中国農業展望報告(2024−2033)を発表(豚肉編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2024−2033)を発表(鶏肉編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2024−2033)を発表(牛肉編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2024−2033)を発表(牛乳・乳製品編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2024−2033)を発表(トウモロコシ編)(中国)
【平山 宗幸 令和6年6月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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