中国農業展望報告(2024−2033)を発表(砂糖編)(中国)
最終更新日:2024年6月28日
中国農業農村部は2024年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2024−2033)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は23年の総括と33年度までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
本稿では同報告のうち、砂糖について紹介する。なお、各砂糖年度は10月〜翌9月である。
1.2022/23年度の砂糖需給動向
糖料作物(サトウキビおよびてん菜)の作付面積は、前年度並みの145万3000ヘクタール(前年度比0.3%減)となった。
このうち、サトウキビは、主産地の広西チワン自治区での干ばつや一部地域での病虫害の深刻化により、単収が1ヘクタール当たり56.4トン(同17.7%減)と大幅に減少したことで、甘しゃ糖生産量は789万トン(同9.3%減)とかなりの程度減少した。てん菜は、単収が同46.9万トン(同8.0%減)とかなりの程度減少したものの、主産地の内モンゴル自治区が天候に恵まれ、てん菜の糖度が高くなったことから、てん菜糖生産量は108万トン(同25.6%増)と大幅に増加した。この結果、甘しゃ糖とてん菜糖をあわせた砂糖生産量は、897万トン(同6.2%減)とかなりの程度減少した(表)。
輸入量は、388万トン(同27.2%減)と大幅に減少した。世界的な砂糖需給のひっ迫に伴う国際価格の高騰で内外価格が逆転し、精糖企業の購買意欲が弱まったことが影響した。主要輸入先を見ると、ブラジルが輸入量全体の8割以上を占めている(図)。
消費量は、人口減少や高齢化の進行のほか、国の健康政策で砂糖の1日当たり摂取量抑制が強調され、砂糖代替品の消費が増加していることから、1535万トン(同0.3%減)と前年度並みとなった。中国糖業協会によると、消費の内訳は工業消費(主に加工食品向けの消費)が54.1%(同0.7%増)、家庭消費が45.9%(同0.7%減)となっている。
2.2023/24年度の砂糖需給動向
2023/24年度の糖料作物の作付面積は、142万7000ヘクタール(同1.8%減)とわずかな減少が見込まれるが、政府は補助金の増額や生産保護区設置などにより、作付面積の安定に努めている。
単収は、主産地が天候に恵まれたことなどから、サトウキビは同66.4トン(同17.7%増)と大幅に増加し、てん菜は同53.8トン(同14.7%増)とかなり大きく増加が見込まれている。この結果、砂糖生産量は1000万トン(同11.5%増)とかなり大きく増加が見込まれている。
輸入量は、国内生産量のみでは国内需要を満たせないことに加え、前年度に国際価格の高騰などで減少した反動から、500万トン(同28.9%増)と大幅な増加が見込まれる。
消費量は、加工食品向けの消費の回復からわずかに増加し、1570万トン(同2.3%増)と見込まれる。
3.2032/33年度までの砂糖需給動向予測
2032/33年度までのてん菜の作付面積は、トウモロコシや大豆、その他の作物との競合による変動が予測されている。一方サトウキビの作付面積は、安定した推移が予測されている。これは、作付けコストの上昇や都市化などによる圃場(ほじょう)の縮小、また、天候の変動などにより拡大が困難とされる中においても、優良品種と優れた栽培方法に対する補助金などにより、他の作物からの作付け転換が継続的に進められることによるものとされている。
今後約10年間で、主産地を中心に優良品種の普及や生産工程全体の機械化などが積極的に進められることで、糖料作物の単収向上が見込まれており、砂糖生産量は年平均1.7%の割合で増加し、32/33年度には1154万トンに達すると予測されている。
消費量は、年平均0.6%の割合で増加し、32/33年度には1644万トンに達すると予測されている。国民1人当たりの可処分所得の増加に伴い消費の増加が見込まれるものの、高齢化の進行や砂糖代替品消費の増加などにより、今後約10年間の増加率は落ち着いたものになると予測されている。
輸入量は、国内外の価格差や市場要因などにより変動するが、原則、供給が需要を下回ると予想されることから、年平均1.3%の割合で増加し、32/33年度は592万トンに達すると予測されている。
【福寿 悠星 令和6年6月28日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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