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デンマーク、世界初の家畜への炭素税を導入へ(EU)

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 デンマーク政府は2024年6月25日、畜産農家に対する農場からの二酸化炭素(CO2)排出量に応じた炭素税を2030年から導入することで、農業団体などと合意したことを発表した。同政府によると、この税制は農業分野での世界初の炭素税の導入であり、温室効果ガス(GHG)排出を削減し、より持続可能で効率的な農業を促進する「グリーン・デンマーク」の一環であるとしている。
 今後、同国議会で審議され、年内にも承認されるとみられている。

炭素税の内容

 2030年以降、畜産農家にはGHG排出量(CO2換算数量)1トン当たり300デンマーク・クローネ(以下「クローネ」、7020円:1クローネ=23.4円(注))が課税され、この税率は35年まで段階的に引き上げられる(表)。ただし、この間は60%の控除が適用されるため、30年の税率は実質的には同120クローネ(2808円)となる。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年6月末TTS相場。
表
 現地報道によると、デンマークにおける乳牛1頭の年間平均GHG排出量(CO2換算数量)は5.6〜6.6トンと試算されているため、この水準を維持した場合、30年には牛1頭当たり672クローネ(1万5724円)〜792クローネ(1万8532円)が課税されることになる。課税の目的について同国内のシンクタンクは、「飼料の変更などによるGHG排出量削減のための解決策を、畜産農家に模索してもらうことである」と述べている。
 炭素税が導入された場合、30年からの2年間の税収分は、畜産業界のグリーン移行の支援に充てられ、32年以降の税収分については、同年に改めて検討するとされている。

今回発表されたその他の環境対策

 今回の発表では、畜産農家に対する炭素税の導入以外にも、(1)2045年までに25万ヘクタールを森林に再生する、(2)30年までに炭素が多く含まれる低湿地の14万ヘクタールを農業生産から除外する、(3)窒素排出量削減のために特定の農場の買い取り、といった環境対策が発表されており、これらの対策のために300億クローネ(7020億円)の予算を充てるとしている。

デンマークのGHG排出削減目標

 デンマークは、2030年までに農業分野からのGHG排出量を1990年比で70%削減し、50年までに気候中立な社会にすることを目標としている。
 同国政府の発表によると、今回の環境対策により、30年までにデンマークの排出量をCO2換算で180万トン削減するとされている。

業界の反応

 今回、この対策に合意したデンマーク農業理事会のソンダーガード会長は、「デンマークの気候変動への取り組みと自然にとって画期的な合意である」と評価した上で、「炭素税が環境負荷の少ないデンマークの農業生産と将来への投資を妨げてはならない」と述べ、持続可能な生産に取り組む生産者への免税措置が重要であることを強調した。
 一方、穀物や飼料などを生産するDLGグループのフンデボールCEO(最高経営責任者)は、「デンマークの生産者が競争力を維持するためには、EUの政策と一致している必要があり、デンマークのみが対策を強化しても、気候や農業は恩恵を受けることはできない」と述べている。
【藤岡 洋太 令和6年7月3日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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