ウクライナ産砂糖および卵へのセーフガード措置発動(EU)
最終更新日:2024年7月5日
欧州委員会は2024年7月1日、ウクライナ産の砂糖および卵について、EUの輸入量がセーフガード発動の基準を上回ったため、輸入関税の課税を7月2日から再開すると発表した。これまでは、ウクライナ支援の一環として導入されている自主貿易措置(ATMs:The autonomous trade measures)により輸入関税が免除されていた。
ATMsにおけるセーフガードの内容
ATMsは、ウクライナのEU向け輸出品に対する輸入関税と輸入割当を停止する措置であり、ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年6月から実施されている。本年6月には1年間の延長がなされ、25年6月まで適用されている
(注1)。
(注1)詳細は、海外情報「EU理事会と欧州議会、ウクライナ産農畜産物貿易措置の延長に合意(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003772.html)をご参照ください。
ただし、輸入量の増加によるEU域内需給への影響が大きいとされる7品目(家きん肉、卵、砂糖、オーツ麦、トウモロコシ、ひき割りの穀物および蜂蜜)については、本年6月の延長時にセーフガード措置が導入された。
すでにオーツ麦については、輸入量が6月上旬にセーフガードの基準数量を超過しており、今回で計3品が関税を課されることとなる(表1)。また、ほかの4品目についても消化率がそれぞれ5割から9割超となっている。
セーフガード数量を超えた品目には実行最恵国税率(WTO協定税率)が課され、その額は、殻付きの卵が100キログラム当たり30.4ユーロ(5284円:1ユーロ=173.83円(注2))、殻付きでない卵は同35.3ユーロ(6136円)から142.3ユーロ(2万4736円)、てん菜由来の砂糖は未精製の原料糖が同33.9ユーロ(5892円)、精製糖が同41.9ユーロ(7283円)である(表2)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年6月末TTS相場。
なお、現時点でATMsは25年6月5日までの措置となっており、25年1月から6月5日までは24年に設定された基準数量の12分の5の数量が新たな基準数量として再設定される。
関係団体の反応
欧州の1万5000者以上の砂糖実需者を会員とする欧州砂糖実需者委員会(CIUS)は声明の中で、EU域内の慢性的な砂糖不足の状況を解消するためには年間50万トンの砂糖輸入が必要と考えており、今回約26万トンの輸入をもって事実上ウクライナからの輸入が停止されることは、EU・ウクライナ双方の経済にとって好ましくないとしている。
また、卵については関係団体などからのコメントは出されていないが、ウクライナからの卵輸入量は2022年以降急増しており、23年には前年比約2.4倍の3万6000トンとなっていた(表3)。このため現地報道では、今回の措置によるウクライナの卵産業への影響は大きく、EU以外の輸出先の模索などが必要になるとされている。
一方、EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は公式X(旧ツイッター)の中で今回のセーフガード発動は予測していたものだとした上で、「セーフガードの発動により、EUの生産者の損失を防ぐことを期待する。また、他のセーフガード対象品目の状況を注視していくことが重要である」とした。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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