このような中で韓国牛肉協会は2024年7月3日、首都ソウルの国会議事堂前で韓国牛肉産業の安定化を訴えるために全国集会を開いた。集会には、国内各地から会員の約半数に当たる1万2000戸以上の生産者が参加した。参加者らは、国会や政府、全国農業協同組合に対し、韓牛価格の下落と飼料価格高騰により、農家が直面している深刻な状況を伝えるとともに、(1)韓牛肉の価格安定化制度の創設、(2)飼料価格の即時引き下げ、(3)借入金返済期間の延長と飼料購入資金などの政策資金の償却、(4)韓牛生産者のための危機管理安定化基金の設置、(5)生産コストの一部負担、(6)輸入畜産物に対する輸入禁止措置の設定(BSE発生国からの牛肉の輸入禁措置止など
(注4))など、韓国の牛肉生産者の経営を安定させるための対策を講じるよう訴えた。
参加した生産者からは、「3年前から韓牛肉価格が下がり始め、肥育牛を出荷するごとに赤字が出ている」「韓牛肉価格は下がったが、飼料価格の高騰で牛を育てる意欲はない。現在50頭の牛を飼育しているが、このままでは廃業も考えている」といった声が上がった。
同協会は、「農民の幸福を約束した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と、農民の幸せのために存在する全国農業協同組合は、それぞれの役割を果たせていない」とした上で、政府に対し「韓国牛肉法
(注5)を制定し、飼料価格を引き下げる」よう求めた。集会に出席した議員からは、廃案となった韓国牛肉法を国会で新たに審議することが示されており、今後の政府の対応に注目が集まっている。
(注4)海外情報「フランス産・アイルランド産牛肉の韓国向け輸出が23年ぶりに解禁(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003857.html)をご参照ください。
(注5)韓国の畜産農家を支援する「持続可能な韓国牛肉産業支援法案」(韓国牛肉法)が2024年5月に国会本会議を通過したが、尹大統領の拒否権により廃案とされた。