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食品ロス・食品廃棄物削減および有機物リサイクルのための国家戦略を策定 (米国)

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 米国環境保護庁(EPA)、米国農務省(USDA)および米国食品医薬品局(FDA)は2024年6月12日、共同で「食品ロス・食品廃棄物削減および有機物リサイクルのための国家戦略」を策定した。本戦略は、国民の食品アクセスの向上などに加え、温室効果ガス(GHG)排出の削減など環境負荷低減を目的としており、昨年12月からのパブリックコメントなどを踏まえて策定された。

1 策定経緯・背景

 米国の国民1人当たりの食品ロス・食品廃棄物(注1)の発生量は、家庭が年間73キログラム、外食が同74キログラム、小売りが同12キログラムとされている(注2)。また、家庭からの廃棄物の3分の1以上が、食品、剪定(せんてい)した庭木の枝葉などの有機物で占められている。加えて、埋却地で発生するメタン排出量の約6割は、廃棄された食品が原因とされている。2015年にEPAおよびUSDAは、30年までに食品ロス・食品廃棄物を半減させ、リサイクル率を50%に引き上げるという目標を設定しており、新たに策定された国家戦略は、この目標を達成に向けた道筋になるとしている。
(注1)国家戦略内では、食品ロスは生産から小売りの前段階まで、そして、食品廃棄物は小売り、外食および家庭において、何らかの理由でサプライチェーンから外れた食品と定義されている。
(注2)国際連合公表の「Food Waste Index Report 2024」および米国ホワイトハウス公表の「National Strategy for Reducing Food Loss and Waste and Recycling Organics」より。

2 国家戦略における取り組みの概要と業界の反応

 食品ロス・食品廃棄物の削減および有機物リサイクルとして、以下の4つの取り組みを戦略の柱としている。
  • 食品ロスの削減:食品ロスを防ぐために収穫や調達の精度を高めるだけではなく、農産物の貯蔵施設整備への融資、保存期間を延ばすことにつながる品種改良やポストハーベスト(収穫後の管理技術)の開発、製造・加工・流通段階のロスを削減するための品質モニタリングや包装資材開発の支援
  • 食品廃棄の防止:キャンペーン・啓蒙活動の展開だけではなく、民間部門との協力による包装デザインの変更、単位容量の縮減、日付表示の改善を行う。また、食品の寄付を促進するため、余剰食品が発生しやすい地域のマップ化や、税額控除の提供、寄付した食品に対する提供者に課せられる責任の軽減措置を講じる
  • 廃棄される有機物のリサイクル率の向上:有機廃棄物のたい肥化や嫌気性分解、バイオ炭製造に対する支援、リサイクル製品の市場拡大促進、レンダリングや昆虫養殖による環境指標の改善効果測定や、リサイクルによるメタン削減量の評価、難分解性化学物質の混入防止や生分解性資材への支援
  • 上記3つの取り組みに関わる政策関係者に対する教育・支援の実施
 国家戦略の策定を受けて、食品ロス・食品廃棄物の削減に取り組んできた団体やたい肥業界は、おおむね称賛を表明しているが、食品の期限表示に関するルールについては、さらなる政府の関与が必要であるとしている。
 また、北米レンダラー協会(NARA)(注3)は、国家戦略内でレンダリングに関して言及したことに加え、(1)食品廃棄物からリサイクルされた製品の公的機関による利用拡大、(2)食品ロス・食品廃棄物に関するデータ整備やリサイクルによる環境面への影響評価の実施、(3)商品ロスや廃棄物の回収、(4)リサイクルを促進するための予算の割り当て、について評価するとしている。
 一方で、レンダリングが年間約2450万トンものと畜副産物や食肉残さなどの廃棄物を回収し、食品ロス・食品廃棄物の削減に多大な貢献をしているにも関わらず、取組の柱にレンダリングを具体的に位置づけていないことに対しては失望感を表明している。
(注3)北米レンダラー協会は米国を拠点としており、主にと畜副産物、食肉産業で生じた骨などのレンダリングを取り扱う。全国団体として、と畜副産物の利用拡大のため政府機関との協議などを実施している。また、レストランから生じる廃油の回収も取り扱っている。
【中島 勝紘 令和6年7月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4383