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OECD/FAO、2033年までの世界の乳製品需給見通しを公表

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 経済協力開発機構(OECD)および国際連合食糧農業機関(FAO)は2024年7月2日、共同で33年までの中長期的な世界の食料需給見通し(注1)を公表した。このうち、生乳・乳製品について紹介する。
 
(注1)OECDおよびFAOは、中長期的な世界の食料需給見通しを年1回(7月ごろ)公表している。

1 生産量の見通し

 世界の生乳生産量(水牛乳を含む)は、飼料効率の改善、遺伝学的改良による1頭当たり乳量の増加から年平均1.6%上昇し、2033年には10億8500万トンに達すると予測されている。特にインドとパキスタンでは、飼育頭数の増加と1頭当たり乳量の増加に伴い大きく増加することから、33年には両国で世界の生乳生産量の30%以上を占めると予測されている(図1)。
図1
 一方、生乳生産量の多い欧州連合(EU)については、生産量は2位を維持するものの、需要の停滞や環境規制への対応、有機酪農や放牧酪農の拡大から飼育頭数が減少し、生産量もわずかに減少すると予測されている。
 また、乳製品輸出量の多いニュージーランド(NZ)でも、持続可能な生産システムや有機酪農への転換、土地面積の制限により生乳生産の伸びが限定されることで、緩やかな増加が予測されるものの、その伸びはわずかとされている。

2 消費量の見通し

 所得と人口の増加に伴い、世界の乳製品消費は増加し、特に途上国での生産・消費が多いヨーグルトなどの生鮮乳製品は、年1%の増加が予測されている。特に、インドとパキスタンでは、所得と人口の増加を背景に同製品の消費量が伸びるとされる(図2)。
 米国や欧州では、乳製品の消費は乳脂肪分に移行し、中でもバターなど加工乳製品(注2)の消費の増加が予測されており、東南アジアでも、嗜好の変化によりクッキーやパイなど製菓用途のバターの消費が増加するとされる(図3)。
 
(注2)加工乳製品にはバター、チーズ、脱脂粉乳および全粉乳が含まれる。
図2
図3
 チーズの消費は、地域の嗜好性や都市化の影響を受けるが、所得と密接な関係があり、最も大きな消費地は欧州と北米とされている。また、1人当たり消費量は引き続き増加すると予測されている。
 脱脂粉乳(SMP)と全粉乳(WMP)は、乳児用粉ミルクおよび製菓原料として、ホエイパウダーは、乳児や高齢者用の栄養製品として、それぞれ消費の増加が予測されている。特にアフリカなど生乳生産が限定的な地域では、牛乳やヨーグルトなど生鮮乳製品の代替品としての利用が増加するとされる。
 一方で、乳製品は食品ロスや廃棄割合が比較的高く、乳製品生産量全体の約4.5%が加工中に廃棄される。このため、生産の伸びにあわせて、今後10年間で酪農部門の食品廃棄量は17%の増加が予測されている。

3 貿易

 乳製品の主要輸出国はEU、NZおよび米国であり、これらが輸出総額の約70%を占める。主要輸出製品は、EUはチーズ、NZはバターとWMPである。2021年以降、米国はEUを抜いてSMPの主要輸出国となり、今後も乾燥能力の拡大により33年までの輸出増が予測されている(図4)。SMPは取引が容易なため、仕向先は世界的に分散している(図5)。中国へのWMPの主要輸出国であるNZは、乳製品の多角化を進めることで、33年までのチーズの生産量増加が予測されている。
 現状、国際市場に参入していないインドについて、近隣諸国への輸出の可能性を積極的に探っている乳業メーカーもあり、今後の国際市場への影響力が注目される。アフリカ、東南アジアおよび近東・北アフリカ(NENA:Near East and North Africa(注3))の乳製品消費量は、今後、同地域の生産量を上回って増加するため、輸入量の増加が予測されている。特にSMPの輸入が増加し、NENAはEU、東南アジアは米国とオセアニアから輸入するとされる。
 
(注3)OECD/FAOの食料需給見通しでは、エジプト、モーリタニア、スーダン、アルジェリア、リビア、モロッコ、チュニジア、サウジアラビア、バーレーン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、カタール、シリア、オマーン、アラブ首長国連邦、イエメンおよびパレスチナを、NENAとしている。
図4
図5

4 価格

 国際市場で乳脂肪分の需要が増加することで、バターとSMPの相対的な価格差は2033年まで広がっていくと予測されている。23年は前年のインフレの反動から多くの乳製品価格が下落したが、今後は投入資材費の緩やかな上昇により、33年まで乳製品価格の緩やかな上昇が予測されている。また、世界の生乳生産量のうち、国際市場で取引される割合が約7%と小さいことなどから、今後も短期的な価格変動が生じやすいとされている。
【渡辺 淳一 令和6年7月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
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