対日輸出の収益性低下で、輸出の多角化が求められる韓国産パプリカ(韓国)
最終更新日:2024年7月18日
韓国農林水産食品流通公社(Kati)は7月12日、日本のパプリカ生産量が2012年からの10年間で80%以上増加(表1)したことに関連し、これまで日本の量販店で圧倒的なシェア(市場占有率)を誇ってきた韓国産パプリカは、今後、苦戦を強いられるとの見通しを同公社HPで公表した。
パプリカ輸出量のほぼ全量が日本向け
日本のパプリカ生産は、農林水産省が行った平成10年度(1998年)「地域特産野菜の生産状況」調査で初めて調査品目に指定されたことで、栽培面積や販売量の把握が可能となった。その後、企業などの参入により栽培面積は増加し、98年の23ヘクタールから2022年には81ヘクタール(98年比252%増)となった。
一方、輸入パプリカは、93年のオランダからの生鮮品輸入解禁に始まり、02年にはそれまでオランダに次いで第2位の韓国が前年比483%と大幅に伸長したことで首位となった。それ以降、日本にとって韓国は最大のパプリカ輸入先となっている。
韓国のパプリカ生産は、95年に輸出品目としてわずか1ヘクタールの栽培面積から始まり、オランダから施設や栽培技術を導入して生産性を向上させてきた。その後、日本での需要増や健康志向を背景とした国内市場からの需要増を受けて生産規模を拡大してきたことで、22年の作付面積は705ヘクタールと大幅に増加した(表2)。
韓国産パプリカの仕向け先を見ると、国内向けが6割前後と過半を占めており、残り4割前後が輸出向けとなり、その9割以上が日本向けとなる。22年の対日輸出量は2万6747トンと輸出量のほぼ100%を占めた。23年は、春の天候不順などの影響で国産仕向け量が増えたことなどから、輸出量は前年比19%減の2万1667トンとなり、ほぼ全量が日本向けとなった(図)。
輸出物流コスト支援の終了で輸出先の多角化が迫られる
2022年頃からの韓国通貨ウォンに対する円安傾向を受けて、韓国産パプリカの対日輸出は収益性が低下してきているとされる。同時に韓国も米ドルに対するウォン安傾向から資材価格の上昇やエネルギー価格の高騰などで輸出コストが増加していたことで、韓国農水産食品流通公社(aT)は23年に単年度事業として輸出額の10〜30%を補助する「輸出物流コスト支援事業」を措置し、輸出支援を行った。
しかし、同事業が終了した24年は再び輸出コストが増加し、生産者、農協などは輸出向けパプリカの販路を国内向けに移行したことで、国内販売価格は低落している。現地報道によると、韓国の人口は約5156万人と市場規模が限られることで供給過多を招きやすく、ウォン安による資材価格の上昇や人件費の高騰などにより、生産者は大きな打撃を受けているとされている。
韓国政府は、対日輸出の収益性低下が顕著になる以前から、新たな輸出先の開拓を行っており、20年には中国向け輸出を開始し、23年にはフィリピンとの検疫条件緩和交渉が妥結した。
韓国産パプリカの日本以外の輸出比率は輸出量全体の1%に満たないが、輸出先の多角化が急務であると提言され、現在、香港、中国、シンガポール、ベトナムなどに輸出されている。
【伊澤昌栄 令和6年7月18日発】
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