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米国農務省、乳価制度の改正規則案を公表(米国)

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 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)は7月1日、生乳の用途別最低取引価格を規定する連邦生乳マーケティング・オーダー(FMMO)制度の改正規則案を公表した。本規則案は、包括的な改正が行われた2000年以降の酪農・乳業業界の変化を踏まえ、実態に合わせるべく最低取引価格の算出に用いる数値などを改正するものである。

(注1)制度改正の背景については、『畜産の情報』2024年7月号「米国酪農経営の動向と乳価形成について」をご参照ください。

1 現行規則の概要

 FMMO制度では、2018年に加わったカリフォルニア州を含めた11の地域内で取り引きされる生乳を対象として、USDAが最低取引価格を設定している。
 最低取引価格は、用途別にクラスTからW(注2)まで設定される。乳業会社には、毎週のバター、チェダーチーズ、脱脂粉乳、ドライホエイの卸売価格と販売量の報告が義務付けられており、クラスT〜Wの最低取引価格は、これらの卸売価格からUSDAが定める算定式によって毎月算定・公表される(注3)
 算定式の考え方としては、乳脂肪および脱脂乳成分の重量当たり価格(以下「単価」という)を算出し、それぞれの含有割合「乳成分係数」を乗じて足し上げることでクラスT〜Wの最低取引価格を算定するというものである。
乳脂肪の単価はクラスT〜Wで共通とされるが、脱脂乳成分の各単価はそれぞれのクラスで算出する。また、それぞれの成分単価は、乳製品の卸売価格から「製造コスト見合い」を差し引いた上で、歩留まり係数(注4)を乗じて算出することが基本となる。

(注2) 飲用乳(バターミルクを含む)はクラスT、アイスクリーム、ヨーグルト、カッテージチーズなどのソフト製品はクラスU、ハードチーズ、クリームチーズおよびホエイなどのハード製品はクラスV、バターおよび脱脂粉乳などのドライ製品はクラスWに分類される。
(注3) 最低取引価格の具体的な算定方法については、『畜産の情報』2024年7月号「米国酪農経営の動向と乳価形成について」をご参照ください。
(注4) 1ポンドの乳成分を使って製造される乳製品重量。例えば、現行規則では1ポンドの乳成分を使って製造されるバターは1.211ポンドとされているため、歩留まり係数は1.211となる。
 

 さらに、クラスU〜Wの設定は11の地域で統一されているが、クラスTは基準価格に用いられており、算定された「クラスT基準価格」に群単位で設定されている「クラスT差額」を上乗せした価格が最低取引価格に適用される。これは、生乳供給が需要に対して不足する地域での生乳生産・供給量確保を目的としたものであり、各地域の需給バランスの実態に合わせた差額としている。

2 改正内容

  今回の主な改正内容は、(1)「乳成分係数」、(2)「製造コスト見合い」および(3)「クラスT差額」の見直し、(4)算定に用いるチェダーチーズ卸売価格の対象製品の変更、(5)クラスT価格の算定式が変更された。

(1)乳成分係数の引き上げ

 乳たんぱく質、無脂固形分、その他固形分の乳成分係数(含有割合)の引き上げ(表1)。近年、乳成分含有量が増加しており、実態に合わせた乳成分係数へと見直された。
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(2)製造コスト見合いの引き上げ

 バター、チーズ、ドライホエイ、脱脂粉乳の製造コスト見合いの引き上げ(表2)。近年、これら製品の製造コストが大幅に増加しており、実態に合わせた製造コスト見合いへと見直された。
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(3)クラスT差額の引き上げ

 100ポンド当たり1.60〜6.00米ドル(259〜972円、1キログラム当たり6〜21円、1米ドル=162.07円(注5))の範囲で設定されているクラスT差額を、同1.70〜7.40米ドル(276〜1199円、同6〜26円)の範囲に引き上げ。輸送コストの上昇と生乳の処理・加工施設の立地状況を踏まえて見直された。

(注5)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」2024年6月末TTS相場。

(4)調査対象乳製品の見直し

 現行規則では、算定式に用いられるチェダーチーズの卸売価格は、40ポンド(18キログラム)・ブロックおよび500ポンド(227キログラム)・バレルを対象としているが、近年の需要が40ポンド・ブロックに移行していることを踏まえ、40ポンド・ブロックのみを対象とされた。

(5)クラスT価格の算定式の変更

 現行規則では、クラスTの算定式で使われる脱脂乳成分単価にはクラスVおよびWの脱脂乳成分単価の平均値を用いているが、クラスVおよびWの脱脂乳成分単価のいずれか高い方の値を用いるとされた。これは、2018年農業法によって改正される前の算定式に戻す形になる。平均値では乳価の下降局面では大きなリスクにさらされるにもかかわらず、上昇局面ではその恩恵が限定的になるとして酪農家から算定式の変更が提案されていた。

3 業界の反応

 今回の最終規則案の公表を受け、酪農家を代表する全米生乳生産者連盟(NMPF)は、3年以上も費やしてきた分析と議論が実を結び、提案内容の多くが最終規則案に反映されているとして、支持する姿勢を示した。
 一方で、乳業会社を代表する国際乳食品協会(IDFA)は、クラスWの市場は他のクラスと比較して限定的であり、限られた市場から算出された値を単独でクラスTの算定に用いるべきではないとして、クラスVおよびWの脱脂乳成分単価の平均値の使用の継続を訴え、最終規則案に否定的な見解を示した。
 最終規則案については60日間のパブリックコメントの実施を経て、最終規則が施行される予定である。

【調査情報部 令和6年7月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805