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OECD/FAO、2033年までの世界の食肉需給見通しを公表

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 経済協力開発機構(OECD)および国際連合食糧農業機関(FAO)は2024年7月2日、共同で33年までの中長期的な世界の食料需給見通し(注)を公表した。このうち、食肉(牛・豚・家きん)について紹介する。
 
(注)OECDおよびFAOは、中長期的な世界の食料需給見通しを年1回(7月ごろ)公表している。

食肉生産

 世界の食肉生産量は、主にアジアでの生産増が見込まれることで、2033年には3億9147万トン(21〜23年平均比11.6%増)と予測されている(図1)。中国の豚肉生産の増加が欧州での豚肉生産量の減少を相殺し、また、世界中での家きん肉生産量の増加が食肉生産量の増加を牽引するとみられている。さらに、中南米の食肉生産は、自国で飼料を生産できることなどにより、拡大を続けると予測されている。
図1
 牛肉の生産量は、中国での品種改良や飼育技術向上による生産量の増加や、インドの安価な水牛肉に対する世界的な需要増から食肉処理・加工施設などのインフラ整備による生産拡大を図ることなどにより、33年には8122万トン(同10.4%増)と予測されている。
 豚肉の生産量は、中国でのアフリカ豚熱(ASF)発生により高いバイオセキュリティ基準を備えた大規模経営への転換が行われたことから、33年には1億3106万トン(同7.6%増)と予測されている。
 家きん肉の生産量は、発展途上国での需要拡大や卵を含めた動物性たんぱく質の需要の高まりにより、33年には1億5993万トン(同15.3%増)と予測されている。

消費

 世界の食肉の消費量は、人口と所得の増加に伴い増加し、2033年の1人当たり年間食肉消費量は、28.6キログラム(21〜23年平均比1.8%増)と予測されている。
 国別の食肉消費量では、膨大な人口を抱える中国およびインドに加えて、ベトナム、米国、ブラジルの伸びが大きいと予測されている。一方、EUでは、消費者のアニマルウェルフェアや環境、健康に対する関心の高まりにより、食肉消費量および1人当たり食肉消費量の減少が予測されている。
 牛肉消費量は、33年には8123万トン(同10.9%増)と予測されている。中国、インドおよびパキスタンでは中間所得層の増加に伴う消費増が予測されている一方、伝統的に牛肉の消費量が多いアルゼンチンやブラジル、米国、豪州、ニュージーランドなどでは、他の食肉に比べて牛肉価格が高いことや、温室効果ガス排出など環境問題に対する関心の高まりにより、1人当たり年間消費量は減少とされている。
 豚肉消費量は、欧州を除くすべての地域で増加するため、33年には1億310万トン(同7.7%増)と予測されている。豚肉が牛肉よりも安価であることから、中南米では1人当たり年間消費量が1.3キログラム(同11.9%)増加するが、その他の地域での消費量が伸びず、世界全体では10.6キログラム(同1.9%減)と予測されている。
 家きん肉消費量は、33年には1億5993万トン(同15.9%増)と予測されている。過去10年(14〜23年)に続き、今後も同様にアジアが世界の消費増をけん引していくとされている。鶏肉は低価格であり、摂取できるたんぱく質に比べて脂肪分が少ないなど、健康的なイメージを持たれていることから、多くの国・地域で消費量の増加が予測されている(図2)。
図2

貿易

 世界の食肉貿易は、2020年から21年にかけて中国のASF発生による供給減の補充のための輸入量の急増から、歴史的な高水準になったものの、同国の豚肉生産の回復を受けて、23年以降の食肉貿易は減少が見込まれている。しかし、アフリカ市場の底堅い成長により、33年には、21年と同水準の4359万トンまで拡大すると予測されている(図3)。
図3
 輸出面で見ると、北米と南米は、33年までに世界の食肉輸出量の56%を占めるようになり、二大輸出国であるブラジルと米国のシェア(市場占有率)もそれぞれ約20%を占めると予測されている。また、アルゼンチン、豪州、ブラジル、タイは、有利な為替レートと飼料生産国であることの恩恵を受け、輸出量の大幅な増加が予測されている。一方で、EUの食肉輸出量は減少を続け、市場占有率は21〜23年平均の16.3%から33年には15%を割り込むとされている。
 輸入面で見ると、アフリカの伸びが大きくなることで、33には537万トン(21〜23年平均比53.6%増)と予測されている。また、中国の食肉輸入量は、国内での家きん肉と豚肉の生産の増加に伴い、徐々に減少するとされている。
【藤岡 洋太 令和6年7月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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