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Z世代のスポーツ関係者向け牛乳消費拡大キャンペーンを開始(英国)

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 英国農業・園芸開発委員会(AHDB)は2024年7月8日、「いつでも牛乳を(Milk Every Moment)」と銘打った消費者向けの牛乳消費拡大キャンペーンを開始した。
 同キャンペーンはAHDBと英国大学スポーツ協会(BUCS:British Universities & Colleges Sport)(注1)の連携により実施され、スポーツという親しみやすい分野を通じて牛乳の情報を提供し、健康的でバランスの取れた食生活には牛乳が有益であると学生に再認識させることを目的としている。
 
(注1)大学および専門学校を含めた高等教育機関においてスポーツプログラムの提供や競技大会の運営などをする全国統括団体。165の大学と学生アスリートやスポーツサポーターなど50万人以上が参加している。

キャンペーンの対象者

 同キャンペーンは、牛乳を単なる健康飲料ではなく、「冷蔵庫にある永遠の定番」と位置付け、牛乳が(1)求めやすい価格であること、(2)7種類の必須ビタミンとミネラル(ビタミンB2、B5、B12、カルシウム、ヨウ素、カリウムおよびリン)が備わった自然飲料であること、(3)筋肉の成長と維持をサポートする天然の高品質たんぱく源であること、(4)正常な骨の維持を助けるカルシウムを豊富に含んでいること−から、運動能力の向上に役立つ優れた飲料であることを強調し、糖分の多いエナジードリンクや添加物の多い牛乳代替品から市場を取り戻すことも狙っている。
 同キャンペーンは、親元を離れ自ら食生活を選択し始める大学生や、18〜25歳のZ世代に焦点を当てており(注2)、彼らに対して、証拠に基づいた情報を提供することで牛乳に関する誤った情報を修正し、毎日の食生活に牛乳を取り入れることを奨励している。また、この世代が牛乳に対する認識を再構築することにより、継続的な牛乳の需要獲得も目指す。
 
(注2)AHDBはこれまでにも、Z世代に焦点を当てた豚肉消費のキャンペーンを行っている。詳しくは、海外情報「英国農業園芸開発委員会が、豚肉消費拡大キャンペーンを開始(英国)」をご参照ください。
 
 AHDBのバーン担当部長は、「次世代のアスリートや将来のリーダーに対し、良質な栄養を提供する牛乳は、健康的かつ活動的で、目標の達成に向けた生活様式のための重要な役割の一翼を担う」とし、キャンペーンを通じ、学生たちに牛乳の持つ栄養的なメリットを伝え、最良な食生活の選択が可能となることを期待した。
 また、BUCSのロバーツ会長も、栄養面でも価格面でも、牛乳が若いアスリートに有益であることは明らかであり、AHDBと協力してこのメッセージをZ世代に向けてアピールしていくとした。
 
 インターネット上の「Milk Every Moment」サイトでは、スポーツにおける牛乳摂取の優位性を強調しつつ、オーツ麦などを原料とする植物性代替乳やプロテインドリンクにも栄養価で牛乳が勝ることを解説している。また、低脂肪乳やヨーグルトを利用した10分程度で出来る簡単なレシピや、1時間程度を要する乳製品を使った本格的なレシピも紹介している。

英国の飲用乳生産

 イタリアのコンサルタント会社であるCLALによると、英国の2023年の飲用乳生産量は597万5000トン(生乳出荷量の39.0%)であった。EUの2大生乳生産国であるドイツおよびフランスの同年の飲用乳生産量は403万2000トン(同12.4%)および267万5000トン(同11.4%)であり、ドイツでさえ英国の3分の2程度にとどまり、欧州において英国では飲用乳が多く飲まれていることがわかる。
 また、英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)によると、23年の生乳出荷量は1486万トンと14年に比べ2.6%増加したが、飲用乳生産量は同13.5%減少している(図)。
図
【渡辺 淳一 令和6年7月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527