カナダ政府、40年ぶりに飼料規則を全面的に改正(カナダ)
カナダ食品検査庁(CFIA)は2024年6月17日(注1)、飼料の製造、販売、輸入などの要件を定めた飼料規則を改正した。今回の改正は、農業分野における科学的知見や国際的な安全規制の変化に対応するための包括的な見直しによるものであり、同規則の全面的な改正は41年ぶりとなる。
(注1)規則は2024年6月17日付で施行され、一部の規則は同日に適用、一部は12カ月後や18カ月後に適用されるとされ、7月3日にカナダ政府の官報およびホームページに掲載された。
同規則は1983年の改正以降、特定の問題に対応するための一部改正(注2)は行われてきたものの、包括的な見直しは行われていなかった。このため、業界関係者からは同規則について、(1)遺伝学や栄養学に関し最新の科学的知見を踏まえた内容ではない(2)さまざまな国際規制当局が採用しているリスク管理方法が採用されていない(3)飼料の承認、登録方法が明確ではなく透明性に欠ける、などの問題点が指摘されていた。このためCFIAは2012年以降、関係者との協議を重ね、21年の改正案公示、パブリックコメントを経て、今般の改正に至った。
(注2)遺伝子組み換えやゲノム編集を行い生産された飼料に関する規制や、牛海綿状脳症(BSE)の感染源となりうる原料の飼料利用に関する規制を行うための改正などが行われた。
改正の主な内容は以下の通りであり、飼料生産者、流通業者、小売業者、輸出入業者などが規制の対象となる。これらの改正は、12カ月もしくは18カ月の移行期間を経て適用される(図)。
【改正の主な内容】
1.ハザード分析と予防管理に関する要件の追加
事業者に対するハザード(飼料の汚染につながる要因)の特定、分析、管理の義務付け。これには、清掃や害虫駆除といった予防管理に関する計画の作成および実施が含まれる。
2.免許制度の導入
飼料の輸出や販売目的の輸入、州をまたいでの輸送に関連する所定の業務に従事する事業者に対し、新たに免許取得の義務付け。有効期間は2年間。
3.飼料の承認、登録方法の明確化
当局による飼料成分の承認および混合飼料の商品登録に関する手順の明確化。また、商品登録を要する混合飼料については、薬用成分を含むものなど一部に限定。
4.トレーサビリティ要件の追加
規制対象者(飼料生産者、流通業者、輸出入業者)が行う飼料の購入や販売について、紙または電子的な方法による記録とその保管(2年間)の義務付け。ただし、小売事業者段階での購入や販売の際の個別番号の記録は不要。
5.ラベル要件の変更
安全性や飼料配合など特定の情報について公用語(英語およびフランス語)での記載、トレーサビリティ要件の追加に伴う識別コードの表示などを義務付け。また、当局があらかじめ承認した表示については、個別飼料別の登録申請を行うことなく表示が可能。
6.対象となる畜種の変更
飼料規則の対象となる畜種について、狩猟鳥類、ネズミ、バイソン、水牛、鹿、ラマ、アルパカ、軟体動物、甲殻類、蜜蜂を追加し、ミンク、キツネを除外。また、対象畜種の変更手続きを簡素化。
7.適用除外となる条件の明示
飼料規則の対象外となる要件(生産者による自家栽培飼料、ペットなど非食用家畜向けの10キログラム未満包装の飼料、研究や見本目的の1キログラム未満包装の飼料、カナダに暫定的に滞在している家畜用の飼料など)を明示。
8.飼料組成および安全性に関する基準の変更
飼料組成および残留基準値などの安全性に関する基準について、現在の科学的知見に基づいて改定。プレミックス飼料やサプリメントなどへの新たな規格も導入。なお、同基準はCFIAが別途定める文書を参照する(9項参照)。
9.技術的内容の取り扱いの変更
飼料成分や薬用成分などの技術的な内容について、規則に記載する代わりに、CFIAが別途定める文書を参照する。
CFIAは、今回の改正により(1)飼料の承認や登録方法の明確化、審査対象となる飼料の限定による申請期間の短縮(2)主要貿易相手先との飼料安全規制の整合性の高まりによる貿易の促進(3)混合飼料に利用可能な飼料成分一覧といった技術的な内容について、規則ではなく関連文書に記載し参照する形式としたことで、今後、当該文書の改訂による柔軟な対応が可能、といった利点が期待されるとしている。
改正について、同国の飼料業界団体であるカナダ動物栄養協会(ANAC)のデュモン業務執行取締役は、「我々は14年以上もの間、この取り組みを待ち望んでいた」と称賛し、「規則の改正により、事業者の負担が軽減されることを期待する」と述べた。
【小林 大祐 令和6年7月22日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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