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カナダ政府、牛肉の輸出促進に向けた支援策を発表(カナダ)

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 カナダ農業・農産食料省(AAFC)は2024年7月8日、カナダ産牛肉の輸出促進を目的として、牛肉関係業界団体に対し、合計600万カナダドル(7億1412万円:1カナダドル=119.02円(注1))以上の支援を行うと発表した。同支援はカナダ農業の強化を目的とする持続可能な農業パートナーシップ(Sustainable Canadian Agricultural Partnership)(注2)の一環である農業マーケティング・プログラム(AgriMarketing Program)(注3)を通じて拠出される。
 カナダでは、牛肉生産量の約4割が輸出に仕向けられており、牛肉産業にとって輸出市場は重要な仕向け先である。AAFCによると、牛肉の輸出量は2013年から22年にかけて、世界的な牛肉需要の高まりやCPTPP発効を背景に堅調に推移したとされる。22年の輸出量は、主要輸出先である米国や日本向けを中心に過去最高の約51万トン(13年比で約84%増)まで増加し、輸出額は過去10年で4倍近く増加している(図)。
 こうした中で、今回の支援は輸出のさらなる拡大を目的として、肉用牛生産者からの課徴金(チェックオフ)などを原資に牛肉のマーケティング活動を行う非営利組織であるカナダビーフと、肉牛生産者団体であるカナダ肉用牛生産者協会(CCA)の2団体が対象とされた。具体的な支援額として、カナダビーフに対しては、3年間で最大586万5110カナダドル(6億9800万円)、CCAに対しては最大45万3364カナダドル(5400万円)が拠出される。この資金を利用して、(1)カナダビーフは四つの新興市場(フィリピン、シンガポール、台湾、ベトナム)を含む19市場をターゲットにした広告およびプロモーション・キャンペーンの実施、(2)CCAは米国や日本といった主要輸出先市場やベトナムなどの新興市場におけるカナダ産牛肉製品の市場アクセスの拡大に向けた活動などを行う。
 今回の発表に対し両団体からは、政府による支援は、海外市場の拡大・開拓を促進し、カナダ産牛肉の競争力向上につながるとして歓迎した。
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(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年6月末TTS相場。
(注2)連邦政府、州政府、準州政府間の5年間(2023年4月1日〜2028年3月31日)にわたる協定で、カナダ農畜産業の競争力、技術革新、レジリエンス(強靭性や回復力)強化を目的としている。
(注3)業界主導の販売促進活動などを通じて、カナダ農畜産物の国内消費拡大および輸出拡大を図る政府プログラム。

直近のカナダ産牛肉の輸出状況について

 AAFCによると、2024年1〜4月の牛肉輸出量は、17万7840トン(前年同期比7.4%増)とかなりの程度増加した。主要輸出先別に見ると、最大の輸出先である米国向けは、米国内の供給減により13万2264トン(同10.3%増)とかなりの程度増加した。続く日本向けも1万7963トン(同11.8%増)とかなり大きく増加しており、米国の供給減がカナダ産牛肉の日本への堅調な輸出を下支えしている。その他、メキシコ向けは1万1977トン(同3.5%増)と増加し、韓国向けは5181トン(同19.8%減)、ベトナム向けは3823トン(同28.8%減)とそれぞれ大幅に減少した。
 なお、中国向けは21年末のカナダ国内での非定型BSEの報告以降、輸出停止が続いている。
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【伊藤 瑞基 令和6年7月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
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