豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2024年6月、大規模な肉用牛や羊などの放牧畜産農家および穀物農家などの経営見通しを発表した。
これによると、24/25年度(7月〜翌6月)におけるこれらの土地利用型大規模農家の農業所得は、肉牛などの価格上昇と生産に適した気候により、農業粗収益が農業所得の増加分を上回ることから、1農家当たり14万9000豪ドル(1624万1000円:1豪ドル=109.00円(注1)、前年度比43.3%増)と大幅な増加が見込まれている(表1)。これにより、農業経営利益も前年度から同4万8000豪ドル(523万2000円)の増加が見込まれている。ただし、ラニーニャ現象による多雨で牧草や穀物の育成が順調であった22/23年度比では1万9000豪ドル(207万1000円)下回ることになる。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年6月末TTS相場。
特に肉用牛の生産状況については、輸出競合国である米国の牛肉生産量減少に伴い、豪州産牛肉の国際的需要が高まっていることから、牛飼養頭数は減少するものの、と畜頭数増により牛肉生産は今後も堅調に推移し
(注2)、肉牛価格を下支えするとみられている。
(注2)畜産の情報2024年5月号「24年2月の牛肉輸出、日本が最大の輸出先」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003214.html)をご参照ください。
営農類型別の経営状況を見ると、農業経営利益では、穀物農家は24/25年度が1農家当たり26万2000豪ドル(2855万8000円)を計上するが、肉用牛農家は2年連続のマイナス計上となる同▲5万4000豪ドル(▲588万6000円)と予測されている(表2)。
肉用牛農家
(注3)の農業経営利益がマイナス計上となるのは、肉牛価格の上昇による農業経営利益の改善以上に農業経営費が高止まりし、収益性改善を阻害すると予測されているからである。
一方、穀物農家
(注4)の農業経営利益は、特に豪州東部のニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州で、大麦や小麦など冬作物生育期の気象条件が良好とされることで、冬作物の生産量増加に伴い、農業経営費の増加分以上に農業粗収益の増加が予想されていることから、1農家当たり26万2000豪ドル(2855万8000円)まで改善するとされている。また、24/25年度は世界的な穀物生産の増加に伴う価格の下落も予測されているが、穀物農家の農業粗収益の一部が相殺されるものの、前年度に比べてやや改善(前年度比3.3%増)するとされている。これは、穀物農家の農業経営費の中で大きな割合を占める、肥料費や燃料費が低下すると予測されているからである。
これら土地利用型農業では、気象動向や国内外の価格動向が、今後の農家経営の予測に大きく影響している状況にある。
(注3)畜産の情報2024年3月号「豪州の畜産農家における経営収支実態と所得向上の取り組み」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003137.html)もご参照ください。
(注4)畜産の情報2023年7月号「豪州における近年の飼料穀物需給動向と見通し」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002811.html)もご参照ください。