野菜農家の経営収支改善に向けた調査結果を公表(豪州)
最終更新日:2024年8月7日
豪州園芸産業の非営利研究開発法人であるホート・イノベーションは2024年6月、豪州初となる野菜農家のベンチマーキング(注1)に関する報告書を公表した。これは、同法人がレベルアップ・ホートと呼ばれる5年間の取り組みの中で行う野菜農家への経営コンサルタントの結果をとりまとめた報告書である。
本報告書は、収益性が高く、国際競争力のある野菜産業実現のための業界目標を設定する指針として公表されており、2022/23年度(7月から翌6月)の野菜農家の1ヘクタール当たりの収益率などについて、以下の3つに分類している。
1.収益性が高い農家:1ヘクタール当たりで収益性の高い上位25%の農家の平均値。
2.平均的な農家:収益性の高い上位25%と低い下位25%を除いた層の平均値。
3.収益性が低い農家:1ヘクタール当たりで収益性の低い下位25%の農家の平均値。
(注1)農場の経営成績に関し、自身の農場が全体の農場の中でどのような位置にあるのか、また、高い生産性を持つ農場と比較して自身の農場はどの部分が違うのかを確認するための仕組み。なお、本調査では野菜の品目については特定されていない。
これによると、収益性が高い農家の農業経営費は1ヘクタール当たり6万5521豪ドル(714万1789円:1豪ドル=109.00円(注2))であり、平均的な農家に比べて高い水準(15.7%高)となっている。一方、農業所得は同2万2567豪ドル(245万9803円)であったのに対し、収益性が低い農家は同▲1万6827豪ドル(▲183万4143円)のマイナスになっている(表)。また、収益性の高い上位25%と低い下位25%を除いた層の平均的な農家は、農業所得が2906豪ドル(31万6754円)であり、農業粗収益に占める農業所得の割合はわずか4.9%にとどまっている。これら農家のいずれも、農業経営費の中で最も大きい費目は人件費であり、収益性が高い農家は農業経営費の47.8%、平均的な農家は同50.4%、収益性が低い農家は同49.2%など、いずれも過半近くを占めている(図1)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の24年6月末TTS相場。
表
さらに、農業粗収益に占める人件費の割合で見ると、収益性が高い農家は35.5%であるのに対し、収益性が悪い農家は64.7%と、農業粗収益の半分以上を人件費として支出している状況となっている(図2)。
本報告の作成に協力した農業ビジネスコンサルタント会社によると、一般的に農業経営費が低い農家は高い所得を得るが、野菜産業では、農業経営費が多大であっても、高い生産性を維持して収益に変えることに長けているため、いかに人件費を抑えるかが収益性確保の重要なポイントであるとされている。
本報告は、今後4年間、毎年継続した報告が予定されており、今後の標本農家数の増加に伴い、州や地域ごとのデータの提供が可能となるとしている。
【調査情報部 令和6年8月7日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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