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中国農業農村部、畜産業の「質の高い発展」についてメディア懇談会で説明(中国)

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 中国農業農村部は2024年7月24日、「質の高い発展」に関するメディア懇談会(注1)を実施した。同年6月に党組書記に就任した韓俊氏は冒頭、「三農(農業、農村、農民)領域における「質の高い発展」の進捗状況について」の概況を説明した後、同部幹部がメディアからの質問に回答した。
 畜産業について記者からは、養豚業が赤字から黒字に転換する中で、肉牛と酪農は引き続き赤字状態とした上で、(1)24年下半期の畜産業の生産と供給の見通し、(2)畜産業の生産の安定化に向けた今後の対策、について質問が出された。これに対し、農業農村部総畜牧師の王音君氏は次の通り回答している。
 
(注1)メディア懇談会は、国務院新聞弁公室が「今年は中華人民共和国建国75周年であり、第14次五か年計画(計画期間は2021〜25年)の目標達成において鍵となる一年であることから、「質の高い発展」の推進シリーズとして開催」するとして2024年3月から開催してきたもの。中央の政府機関では、農業農村部で6部署目となる。

2024年下半期の中国畜産業の生産と供給の見通し

 今年に入ってから肉類、卵類および乳製品はいずれも増産となり、供給量は十分であるものの、価格は全体的に低迷した。
 上半期は、養豚については、市場への出荷調整と農業農村部による生産能力の調整が相互に作用し、利益率が上がったことから正常な経営状態まで回復した。最近は豚1頭当たり400元(8548円:1元=21.37円(注2))の利益が出ているとみている。他方で、牛肉と生乳の価格はそれぞれ前年比で12.1%、12.5%下落し、いずれの農家も赤字に陥っている。
 下半期は、養豚については収益も生産量も良好な推移が見込まれる。6月末の飼養頭数について、母豚の4038万頭は、基準とする3900万頭の103.5%に相当するが、適正な範囲とされる「緑色ゾーン」の水準に収まっている(注3)。また、出荷時期に近い中・大成体豚の飼養頭数も前年比で6.4%減少した。他方で肉牛と酪農は、出荷や生産までの周期が豚よりも長いため、短期的には価格は低迷を続けるとみられる。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年7月末日TTS相場。
(注3)母豚飼養頭数を通じて行われる豚の「生産能力管理調整方策」については、海外情報「中国農業農村部、豚の飼養頭数調整のための方策を改訂(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003728.html)をご参照ください。

畜産業の生産の安定化に向けた今後の対策

 農業農村部は今後、主に次の5つについて適切に措置する。

(1)生産能力の調整
 豚について、母豚の飼育頭数を引き続き注視し、生産調整とそのための補助金や融資などの保障政策の両方の実施を通じ、適正目標としている3900万頭を基準とする適正な範囲に収まるよう努める。

(2)予防措置の強化
 養豚については、母豚、子豚、中・大成体豚などの各段階における飼養頭数データの動向を注視し、農家が適時適切な価格で出荷し、利益を確保できるよう支援する。その際、出荷の過度な抑制または集中を防ぎ、価格の急上昇または急低下を防ぐ。特に、来年の春節後、消費が冷え込む時期に豚の価格が大幅に下落しないよう注意する。
 肉牛と酪農については、農家を適切に指導し、老齢の牛や生産性の低い牛を適切に 淘汰 (とうた) することで飼養する牛の構成を適切化するよう促す。

(3)補助金制度の有効活用
 酪農については、乳業各社による地元産生乳の買取りの促進、または、前年以上の買取り量に対する補助金などの価格維持のための措置を、主要生産地の省政府が着実に実施するよう指導するとともに、コスト削減型飼育モデルの普及を図る。また、生乳の品質向上、エサの食料(トウモロコシや大豆など)から飼料(牧草、稲わらなど)への転換、産地全体で取り組む乳業各社の生産能力の引き上げなどの政策を組織的に実施する。あわせて、酪農家への融資や保険などの支援の強化により、各地域での乳牛の過度な淘汰を防止する。

(4)重大な疫病のまん延防止
 通常行うべき疾病予防措置を、着実かつ完璧に実施する。アフリカ豚熱や高病原性鳥インフルエンザウイルス、口蹄疫などの重大動物疾病の予防のほか、自然災害の発生後は適切な対策を講じることなどにより、秋に行っている防疫対策の準備を滞りなく行うとともに、重大な動物疾病の流行の抑制を堅守する。

(5)産業レベルの引き上げ
 畜産業の施設高度化、組織化、産業化および産業チェーンの拡大を強力に推し進めるとともに、畜産物の高付加価値化を図る。また、生産現場と加工企業の一体化を促進し、企業が注文生産または売買契約などの「連農帯農の仕組み」(注4)を推し進めることで、より多くの畜産農家が収益を上げられるようにする。また、(政府が推進する)大豆かす利用の削減・代替飼料利用プロジェクト、家畜ふん尿の資源化、畜産業の持続可能な発展などを引き続き促す。

(注4)「連農帯農の仕組み」とは、農業農村部が農家の収益向上を目的に推進するもので、農家と、地元のトップ企業や農民専業合作社などの農業経営主体とが構築する「緊密に連携し、安定的な提携関係(「帯」)を維持し、共に長く収益を得る」関係のことをいう。
【調査情報部 令和6年8月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530