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JBS社、畜産廃棄物を航空燃料などに利用(ブラジル、米国)

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 世界最大規模の食肉企業であるJBS社(本社:ブラジル)は7月24日、過去2年間に米国、カナダ、豪州の同社事業所から排出された畜産廃棄物120万トンについて、持続可能な航空燃料(SAF(注1))などの再生可能燃料の生産に仕向けたと発表した。
 同発表によると、同社は食肉生産の際に生じる非食用の畜産廃棄物から生成した牛脂(タロー)や豚脂(ラード)について、22年には46万5000トン、23年には70万トンを、再生可能燃料の生産のために提供したとされる。また、傘下の企業などを通じて、今後、獣脂を利用したSAFや船舶用燃料の現地生産に関する研究をブラジルで行うとされている。
 獣脂は従来、食用油脂、飼料原料や石鹸、化粧品などの用途に仕向けられるほか、一部は廃棄処分されてきた。しかし近年、米国やシンガポール政府がSAFの利用率向上を掲げる(注2)中で、再生可能燃料向けとみられる獣脂の輸入が拡大している(図1)。このため、主要輸出国の平均輸出価格は、18年の1キログラム当たり0.7米ドル(107円:1米ドル=153.44円(注3))から、23年には同1.25米ドル(192円)と、直近5年間で1.8倍に上昇している。
 主要輸出国の中でもブラジルの獣脂輸出量は、直近3年間で大幅に増加している(図2)。23年の輸出量は26万トン(前年比約3.0倍)であり、うち米国向けは22万トンと輸出量全体の8割以上を占めた。現地報道によると、獣脂は大豆などから作られる植物性油に比べて安価であることや、米国における税制上の優遇措置などが増加の要因とされている。
 JBS社のウェラー最高サステナビリティ責任者は、「畜産由来の廃棄物を再利用することで環境に貢献するとともに、産業における脱炭素化を支援するこの取組みは、責任ある廃棄物管理と循環型経済に対する同社の誓約を強化するもの」と述べている。
 
(注1)植物や廃食用油、獣脂などから作られる航空燃料。化石燃料に比べて温室効果ガスの排出量を50%〜80%削減できるとされる。
(注2)2030年までに米国では航空燃料の10%、シンガポールでは3〜5%をSAFに置き替えるとの計画をそれぞれ発表している。しかし、世界のSAFの供給量は、23年時点で航空燃料全体の0.2%に満たないと見積もられている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年7月末TTS相場。
図1 獣脂輸入量の推移(国別)
図2 獣脂輸出量の推移(国別)
【小林 大祐 令和6年8月8日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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