米国農務省による世界および米国のトウモロコシ需給予測(2024年8月)
米国などの増産見込みを受けて、期末在庫は高水準の見通し
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2024年8月12日、2024/25年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した(表1)。
これによると、同年度の世界のトウモロコシ生産量は12億1982万トン(前年度比0.3%減)と前月から497万トン下方修正された。このうち、最大のトウモロコシ生産国である米国は単収の引き上げにより前月から118万トン上方修正されて3億8474万トン(同1.3%減)となり、これに続く中国、ブラジルはいずれも据え置かれた。一方、EUとロシアなどでは著しい高温や干ばつにより単収がそれぞれ下方修正されたことで、世界全体では米国の増産分を上回る減産とされた。
輸入量は、1億8585万トン(同1.3%減)と前月から66万トン下方修正された。EUや中国などはいずれも前月から据え置かれたが、アジア諸国やエジプトなどでの下方修正がインドの上方修正分を上回った。近年、インドではエタノール原料や飼料用としてトウモロコシ需要が急増しており、輸出が抑制される中で輸入が増加しているが、アジア諸国やエジプトの需要減の方が大きかった。
消費量は、12億1817万トン(同0.0%増)と前月から411万トン下方修正された。このうち、中国やブラジルなどは前月から据え置かれたが、米国やEUで下方修正された。
輸出量は、1億9147万トン(前年度比4.5%減)と前月から34万トン下方修正された。このうち、米国は生産増を背景に前月から上方修正され、ブラジルとアルゼンチンはいずれも据え置いた。一方、ウクライナやEUなどが下方修正されたことで、米国の増加分を上回る減少とされた。
この結果、期末在庫は3億1017万トン(同0.5%増)と前月から147万トン下方修正されたものの、引き続き高水準が見込まれている。
米国は単収増加で生産量は上方修正、輸出量も2年ぶりの高水準
USDA/WAOBは同日、2024/25年度(9月〜翌8月)の米国のトウモロコシ需給見通しを公表した(表2)。
生産量は、作付面積および収穫面積が下方修正される中で、単収の上方修正から151億4700万ブッシェル(3億8475万トン(注1)、前年度比1.3%減)と前月から上方修正され、前年度をわずかに下回ると見込まれている。
米国内消費量は、126億6500万ブッシェル(3億2170万トン、同0.4%増)と前月からわずかに下方修正された。このうち、飼料等向けやエタノール向けは前月から据え置かれたものの、でん粉用途向けなどを含む食品・種子・その他工業向けが下方修正された。
輸出量は、国際相場が比較的低い水準にあることで米国産トウモロコシの需要が高まるとの期待から、23億ブッシェル(5842万トン、同2.2%増)と前月から上方修正され、22年9月以来の高水準とされた。
この結果、期末在庫は20億7300万ブッシェル(5266万トン、同11.0%増)と前月から下方修正されたものの、高水準となった前年度をかなり大きく上回ると見込まれている。
また、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は、下方修正されたものの13.9%(同1.3ポイント増)と前年度からわずかな増加が見込まれている。
生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり4.20米ドル(644円。1キログラム当たり25.4円:1米ドル=153.44円(注2)、同9.7%安)とかなりの程度下落が見込まれている。
(注1)1ブッシェルを約25.401キログラム、1エーカーを約0.4047ヘクタールとして農畜産業振興機構が換算。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年7月末TTS相場。
【峯岸 啓之 令和6年8月16日発】
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