細胞培養肉に関する消費者意識調査の結果を公表(豪州、ニュージーランド)
豪州・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)はこの程、2023年に委託により行った細胞培養肉(Cell-Cultured meat)に関する消費者意識調査の結果を公表した。本調査は、18歳以上の豪州の消費者1237人とニュージーランド(NZ)の消費者810人を対象にオンラインにより行われ、細胞培養肉に対する(1)消費者の認知度(2)安全性の認識(3)消費の意向などが聴取されている。
消費者の認知度では、細胞培養肉について「聞いたことがない」と回答した者が全体の35%、「聞いたことはあるがほとんど何も知らない」と回答した者が同39%と、回答者の74%がほぼ認知していないことがわかった(図1)。世界的には、シンガポールで20年12月、米国で23年6月、イスラエルで24年1月にそれぞれ細胞培養肉の商業販売が認可され、シンガポールでは世界に先駆けて市場流通しているが、24年8月現在、豪州とNZでは市場流通していない状況が、本調査結果で反映されている。
また、安全性の認識について、回答者の62%は、細胞培養肉の安全性を確信していないとしている(図2)。これを反映するように、もし細胞培養肉が豪州およびNZで販売された場合、細胞培養肉を食生活に取り入れないとした回答者は約半数の48%となった(図3)。
一方で、細胞培養肉を食生活に取り入れるとした回答者のうち、
・51%が細胞培養肉を牛肉などの従来の食肉から部分的に置き換える
・38%が従来の食肉に加えて摂取する
・14%が従来の食肉に完全に置き換える
としている(複数回答可、図4)。
FSANZはこのほか、特筆すべき調査結果として、細胞培養肉を食生活に導入するとした回答者の40%が、植物性たんぱく質の消費に一部または完全に取って代わるか、あるいは植物性たんぱく質に加えて消費されるとしたことを挙げている。
FSANZは、過去の文献調査など実験室で生産された細胞培養肉という用語は食品としての安全性の低さを連想させることから、今般の調査の対象となった消費者は、細胞培養肉に対する安全性への懸念が生じた可能性も高いとしている。その一方で、細胞培養肉という用語がメディアなどで一般的に使用されていることを考慮すると、現在の細胞培養肉に関する消費者の安全性の認識を正確に表している可能性も存在するとしている。
FSANZは、今般の調査結果は23年時点のものであり、今後、消費者の細胞培養肉に対する理解醸成が進むにつれて消費の意向が変化する可能性があるとともに、消費の意向が必ずしも実際の消費行動と一致しないことを示唆している。
【調査情報部 令和6年8月19日発】
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