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中国農業農村部、乳牛および肉牛の生産現場の課題に対する対策を示唆(中国)

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 中国農業農村部は2024年8月21日、業界関係者など(注1)を招集した乳牛および肉牛の生産情勢に関する座談会を開催し、生産現場が直面する課題と今後の対策について意見交換を行った。
 座談会の背景には、年初から下落し続けている中国の牛肉価格に関し、6月に農業農村部が「肉牛生産の安定化に関する通知」を発表(注2)した後も下落が止まらないために開催されたとみられる。
 中国の畜産業界では、ここ数年、食肉価格の下落が続いており、昨年は豚肉、今年は牛肉が大きな問題となっている。

(注1)座談会には、中国の企業および合作社8社(内モンゴル伊利グループ、現在牧業、河南盛全農牧など)、業界2団体(中国畜牧業協会および中国乳業協会)のほか国家発展改革委員会、工業・デジタル部、財務部、商務部、国家衛生健康委員会、市場監督管理総局および金融監督管理総局が参加した。

(注2)「肉牛生産の安定化に関する通知」については海外情報『中国農業農村部、肉牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)』(令和6年7月31日発)をご参照ください。

■座談会における農業農村部長の発言概要

 座談会に参加した企業などから、(1)市況低迷が続き飼育農家も企業もコスト割れが著しいこと、(2)中央および地方政府の支援策の活用や自助努力によるコスト改善、増益を模索しているものの、自己資金難の状態にあること、などを理由として追加支援を求める声が相次いだ。
 
 これに対し農業農村部の韓部長は、業界関係者から声を吸い上げるための連絡体制を常設する予定であり、一連の解決策を整理、検討した上でより強力な政策支援を講じたいとしたほか、次の発言を行った。

 (1) 今後、秋冬の需要期の到来で市況が上向く可能性があり、また、各種支援策によりコスト割れがある程度解消される可能性がある。

 (2) 地方の関係部門においては、金融機関の協力を積極的に求め、暫定的に経営難に陥っている飼育農家が資金の返済猶予を得られるようにするとともに、飼育農家には飼育中の牛を担保とする融資や肉牛保険商品の活用を促すこと。地方政府に財政余力がある場合は、新たな補助金などの支援策を打ち出すこと。生産者、小売業者間のマッチングを進め、牛肉の消費拡大にも努めること。貧困から抜け出した飼育農家が困難に直面している場合は、「1農家1政策」(農家を個別に支援していくこと)を実施し、絶対に「返貧」(注3)する飼育農家を出さないこと。
 
(注3)中国政府は国民全体を貧困から脱却させるべく、「貧困県」を指定してその発展を支援する政策を推進してきた。2020年、すべての貧困県の解消が宣言されて以降、現在は貧困状態に戻る(これを「返貧」という)ことがないようにすることが重要な政策課題となっている。
 
 (3) 生産者は、協力して生産量の安定化を図り、周期的な価格変動が起きないよう努めること。各者が優良飼料の適切な供給、茎などの副産物を原料とする飼料の有効活用によって高価な飼料用大豆かすの利用を減らすなどの生産コストの削減、牛肉加工の高度化、六次化など産業チェーンのより一層の統合、新たな商品や販売モデルの創出などの工夫を行い、収益の向上を図ること。
 また、関係業界団体は、業界の主要な問題について深く検討し、政府に対して適時に提言を行い、業界、政府間のよき仲介者となること。

■(参考)現下の牛肉価格

 2023年2月から下落を始めた牛肉卸売価格は、座談会開催日の8月21日には1キログラム当たり60.53元(1293.5円:1元=21.37円(注4))となり、5月の1キログラム当たり64.0元から、さらに下落している(注5)

(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2024年7月末日TTS相場である1元=21.37円を使用した。

(注5)21年以降、24年5月までの牛肉卸売価格の推移については「畜産の情報」(2024年7月号)『牛肉生産量は増加、輸入量も引き続き増加傾向で推移』をご参照ください。
【調査情報部 令和6年8月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8105