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中国農業農村部、高品質肉牛の品種改良支援に関する提言に回答(中国)

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 中国農業農村部は2024年7月19日、中国人民政治協商会議(略称は「政協会議」)(注1)において全国委員会の委員である陳化蘭主任(注2)が「肉牛産業の発展に対する支援を強化すべきである」旨の提言をしたことに対する回答の概要を公表した(注3)

 (注1)全国人民代表大会と合わせて「両会」と呼ばれる中国の最高意思決定機関の一つで、中国共産党が標榜する多党協力と政治協商を体現する重要な会議。
 (注2)黒竜江省から選出された委員で、中国工程院院士(アカデミー会員)のハルピン獣医研究所国家鳥インフルエンザ実験室の主任
 (注3)政協会議の全国委員が会議開催期間中に特定の行政分野に対して提言を行った場合、提言に関する分野の担当政府機関は、その回答を公式ホームページ上で公開することとなっている。

提言に対する農業農村部の回答概要

 提言を行った委員は、「高品質肉牛の品種改良・刷新に関する支援を強化し、国産肉牛に占める高品質肉牛の割合を高めることは、わが国の肉牛品種資源の拡充、畜産業のさらなる質の高い発展の実現、また、高付加価値により飼育農家の収入を引き上げる上でも、極めて有効な手段の一つである」として、高品質肉牛の品種改良などに関する支援を求めていた。
 提言に対し、中国農業農村部は高品質肉牛の品種改良について、次の回答を行った。

(1)肉牛品種の系統的な発展、支援について

 肉牛の品種については、「十四五全国現代種苗発展規画(注4)」、「全国肉牛遺伝資源改良計画(2021―2035年)」を公表し、品質に優れた品種・資源の維持および利用、優良品種の選別と普及、優良品種の繁殖などの重要業務を実施している。また、「国家育種連合攻略総合方策」を公表し、肉牛の中でも優良な種畜企業が自ら、または他企業と連合して課題に挑戦するプロジェクトを支援している。

 (注4)中国農業農村部が2021年12月に発表した、食糧等の重要農産物の安定供給とそれを支える種苗産業の全面的な向上を目指す5カ年計画。種苗産業の発展に関する基本的考え方や構築されるべき産業の枠組みなどのほか、穀物、大豆、油糧、特産品(茶、キノコ、漢方薬)などについては取組目標が設定されている。

(2)業界の要となる種畜企業の育成について

 竜江元盛食品有限会社の子会社雪牛(注5)を含む48の国家肉牛育種場を選定し、これらの者に助成金を交付し、肉牛生産能力の測定業務の発展を支援している。企業の規模、刷新能力、発展の潜在力などを指標として、5社の肉牛育種企業を選定して国家主導の種畜連携スキームに組み入れ、研究機関、金融機関との連携を支援し、品種の育種・刷新速度の向上を支援している。

 (注5)「雪」は牛肉のサシを表現し、「雪牛」は中国では高級牛肉のイメージを持たれている。牛肉の消費が増え始めた当初には、日本の和牛に由来するとされる牛が「雪花牛」などと銘打って販売されることもあった。

(3)関連プロジェクトの支援の強化について

 国家発展改革委員会が策定した「十四五現代種畜レベル向上プロジェクト建設規画」と連携し、7つの肉牛品種プロジェクトについて、国家資金を用いて企業の関連施設の整備を支援し、肉牛の新品種の選別および育成プロジェクトを展開している。

 これらのほか、近年、黒竜江省委員会および省政府は、肉牛産業の発展を極めて重視しており、「黒竜江省種苗振興行動実施方策」「黒竜江省高級肉牛産業「1100プロジェクト」実施方策」などによって、高品質肉牛の発展目標、関連業務およびその実施方法を明確にしてきた。2019年からは、竜江元盛食品有限会社を通じて肉牛遺伝資源を海外から導入し、種牛拠点の建設、主要育種場の建設、生産能力の測定など、我が国固有の高品質肉牛の新品種の育成を加速させてきた。23年末までに、子世代で1200頭、孫世代では400頭の母牛を育成しており、新品種の選抜で成果を上げている。

参考:全国肉牛遺伝資源改良計画(2021年―2035年)の概要

 本計画は、中国農業農村部が2021年4月に発表した、「新全国家畜・家きん遺伝資源改良計画」の一つであり、21年から35年までの15カ年で達成する目標を定めた長期計画である。同様の計画は、肉牛のほか、豚、乳牛、羊、採卵鶏および肉鶏について作成された。
 本計画は、肉牛に関する目標について、総論として、(1)高レベルな国家肉牛育種場の建設、(2)優良な遺伝資源の供給能力の大幅な向上、(3)品種の登録および生産能力測定範囲の拡大、(4)世界一流の遺伝資源評価プラットフォームの構築、(5)遺伝資源の選別の加速,(6)肉牛の体重(胴回り部分)の15%から20%程度の向上、(7)新たに3から5つ程度の肉牛系統を育成、(8)(中国を代表することのできる優良かつ有力な)肉牛育種企業2、3社の育成、(9)これらによる肉牛産業の国際競争力の大幅な向上を掲げている。
 また、主要指標として、次の二つを定めている。
 ア 毎年優秀な種牛を400頭育成する、そのうち80%以上は自主育成したものとする、毎年150頭の若牛の有用測定を行う。
 イ 肉牛の体重(胴回り部分)の15%から20%程度の向上、乳牛兼用牛による搾乳可能量の10%から20%の向上。
【調査情報部 令和6年9月3日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530