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EU産乳製品に対する中国の反補助金調査が開始(EU、中国)

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 中国商務省は8月21日、EU産のチーズやクリームなどの6品目の乳製品に対する反補助金調査の開始を発表した(調査対象となる乳製品の詳細は表に記載)。
 発表に際して同省は、補助金を受けて生産されたEU産乳製品の輸出により、中国国内の乳製品産業が損害を生じている可能性があるとし、EUが実施する共通農業政策(CAP)のみならず、アイルランド、オーストリア、イタリア、ベルギー、クロアチア、フィンランド、ルーマニア、チェコの8つの加盟国独自の補助金も調査対象としている。
 反補助金調査の対象期間は2023年4月1日から24年3月31日まで、また、中国国内の乳製品産業に対する損害調査の対象期間は20年1月から24年3月までとし、25年8月21日までには同調査を終了する予定としている。
 これとは別に同省は6月、EU産の豚肉とその副産物に対してアンチダンピング調査を開始している(注)
 
(注)海外情報「EU産豚肉に対する中国のアンチダンピング調査が開始(EU)」をご参照ください。
 
 EUにとって中国は主要な乳製品輸出先の一つであり、今回の調査対象となった6品目を見ると、23年の中国向け輸出量は約13万トンとなり、輸出量全体の8%を占めた(表)。特にミルクおよびクリーム(脂肪分が全重量の10%以上のもの)については、中国向けが同4割程度を占める第1位の輸出先となっている。
表

EU側の反応

 現地報道によれば、欧州委員会の報道官は本件について、「中国政府による調査がWTOのルールの下で適切に実施されるよう確認していく」としている。
 また、EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は8月21日、X(旧ツイッター)を通じ「EUと中国の貿易関係の係争が農業部門に影響していることを憂慮する」と発信した。さらに、「WTOのルールを尊重して生産・輸出している中で、共通農業政策(CAP)へ疑義が課せられたことは受入れられるものではなく、欧州委員会による強い支援を望む」とした。
 欧州乳製品輸出入・販売業者連合(Eucolait)もプレスリリースを公表し、中国による反補助金調査の開始を非難した。併せて、食料安全保障が優先される中、食料品が電気自動車に関する係争の犠牲になるのは明らかに不公平であるとし、欧州委員会に対して高レベルでの解決に向けた取組みとWTOルールに則った調査実施の確保を求めた。
【調査情報部 令和6年9月3日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527