畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2024年 > 欧州委員会、デンマークの養豚アニマルウェルフェア支援計画を承認(EU)

欧州委員会、デンマークの養豚アニマルウェルフェア支援計画を承認(EU)

印刷ページ
 欧州委員会は2024年8月21日、デンマークの養豚における断尾の削減を支援するため、2000万ユーロ(32億3880万円:1ユーロ=161.94円(注1))の国家援助規則(注2)に基づく計画を承認したと発表した。EUでは、アニマルウェルフェアの観点から、断尾を減らすため、断尾の要因とされる子豚の尾かじりを減らすための飼養環境の改善が求められている。今回の支援計画は、この改善などを支援するものとなる。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年8月末TTS相場。
(注2)国家援助規則(State aid rules):EUでは域内統一市場の原理を歪める可能性のある国家による支援は禁止されている。各加盟国が独自の支援を行う場合、欧州委員会に計画を提出し承認を得る必要がある。

支援の内容

 今回承認された計画では、尾かじり被害を軽減するための措置として、(1)給餌場所や給水場所の増設、(2)監視の強化、(3)豚舎などの飼養環境の改善の他、(4)従業員などの研修などが支援対象に含まれ、2029年末まで実施される。

EUおよびデンマークにおける断尾の実施状況

 EUの指令では、2013年から慣行的な断尾が禁止されており、飼養環境の見直しを行った上で、尾かじりを防止できない場合に断尾を行うことができるとされている。
 一方、欧州委員会などが18年に行った調査では、多くの加盟国で断尾が実施されており、デンマークはその割合が最も高く、同国で飼育されている豚の98%(EU平均77%)で断尾が行われていた(表1)。
表1
 デンマークでは、尾かじりを防止できないことが書面で記録されている場合に限り断尾を実施することができ、4日齢(EU指令では7日齢)よりも後に断尾が行われる場合には、麻酔下での処置が義務付けられている。
 18年に断尾の実施状況を調査した欧州獣医師連盟(FVE)と欧州豚健康管理協会(EAPMH)は、段階的に断尾を廃止していくことを提案しており、22年には、欧州食品安全機関(EFSA)が適切な飼養管理がされている場合には、断尾は必要ないとする意見書を発表し、断尾を行うべきではないとする見解を示していた。
 24年1月にデンマーク獣医食品局が発表した調査結果によると、生産者の3割に問題があると指摘され、その半分以上が断尾を実施するに必要な書類の不備であった。同局は、24年も同様の調査を実施するとしており、生産者に対して書類の管理を徹底すること求めている。
 
 なお、EUの他の主要豚肉生産国のうち多くの国で引き続き断尾が行われているが、オランダは30年から断尾を行わないことを発表している他、ドイツでは断尾を行うことを認める要件の引き上げを検討している(注3)
 
(注3)畜産の情報2024年8月号「輸出需要減退や規制強化により減産が続くドイツ養豚産業」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003343.html)をご参照ください。

デンマーク政府によるアニマルウェルフェア協定

 2024年2月、デンマーク政府はアニマルウェルフェア協定を発表した。この協定では、アニマルウェルフェア向上のために今後行っていくべきとされる31の取り組みが示されている(表2)。この中で、断尾の削減に向けた取り組みを行うとされており、今後、断尾を実施した場合の課徴金の導入の可能性について検討するとしている。
表2
【藤岡 洋太 令和6年9月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397