畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2024年 > 2023年の世界の乳業ランキングトップ20を公表(EU)

2023年の世界の乳業ランキングトップ20を公表(EU)

印刷ページ
 オランダの農協系金融機関ラボバンクは8月、2023年の世界の乳業の売上高(注1)ランキング上位20社を発表した(表)。
 
(注1)売上高は、牛乳・乳製品類の販売に関するものが対象とされ、2023年の財務状況を基本に、特定の企業合併・買収(M&A)に基づく若干の調整が加えられている。

2023年の概況

 ラボバンクによると、2023年は乳製品価格が記録的な高値となった22年から下落したため、上位20社の総売上高(米ドル換算)は、22年の前年比8.1%増から23年は同0.3%増に縮小したとされている。また、ニュージーランドのフォンテラの消費者向け事業の売却や、英国に本拠を置くユニリーバのアイスクリーム事業の売却といった大型のM&Aの予定もあり、こうした複数ブランドを所有する企業による中核事業に重点を置く動きは、今後、上位20社の売上高の変動につながる可能性があるとされる。また、今後、いくつかの企業では、持続可能性目標が部門再編の動きに影響する可能性もあるとされている。
 米国では、今後、新規工場の建設や既存工場の拡張に対し、26年までに70億米ドル(9909億円:1ドル=141.56円(注2))以上の投資が予定されている。その大半はチーズ生産に投資されるが、限外ろ過や賞味期限の延長(ESL)およびラクトースフリーに対する需要の高まりから、液状乳部門への投資も行われているとされる。
 また、今回はメキシコのグルポ・ララが、23年は米ドルに対するメキシコペソの為替相場が前年比11.8%上昇したことで、ドル建ての既存事業売上高が増加し、昨年上位20社入りしたアイルランドのグランビアを抜いて上位20社にランクインしている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「前年の年末・年間平均」の23年間平均TTS相場。

乳業各社の動向

 前年に続き首位となったフランスのラクタリスは、売上高が前年比5.6%増の302億米ドル(4兆2751億円)となり、乳製品企業としては史上初めて年間収益が300億米ドル(4兆2468億円)を超えた。同社は着実な事業収益の増加とM&Aにより成長してきたが、中でも2023年11月のフォンテラ社とスイスのネスレの合弁会社であるデイリー・パートナーズ・アメリカス・ブラジルの買収は大きく、ブラジルでの影響力を拡大させた。
 第2位となったネスレは、売上高が前年比3.4%増の241億ドル(3兆4116億円)と増加し、また、収益性の改善などから2年ぶりに第2位となった。
 第3位の米国最大の酪農業協同組合であるデイリーファーマーズ・オブ・アメリカは、売上高が前年比11.4%減とかなり大きく減少し、昨年の2位から順位を下げた。23年は他乳業へ販売する生乳取引価格の大幅な下落により減収となったが、同社の販売部門は依然として強力であり、米国全土に数十の消費者向け地域別ブランドを展開している。
 第4位のフランスのダノンは、ロシアによるウクライナ侵攻後の23年7月にロシアにおける事業の売却を余儀なくされた。同社によると、ロシア国内の事業は同社の売上高の約5%を占め、損失は総額12億ユーロ(1842億円:1ユーロ=153.50円(注2))になるとされた。また、米国のプレミアムオーガニック乳製品事業(ホライズンオーガニックおよびワラビー事業)の売却も売上減の一因となり、同部門は同社の総売上高の約3%を占めていた。
 第5位の中国の伊利集団は、山羊乳粉乳大手である同国のオースニュートリア(Ausnutria Dairy)への出資比率を高めつつ、事業収益を増加させた。ただし、人民元ベースでの売上高は増加したものの、為替の影響によりドル建ての売上高は減少した。
表
【渡辺 淳一 令和6年9月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527