米国農務省、食肉・食鳥製品の表示ガイドラインを改定(米国)
米国農務省食品安全検査局(USDA/FSIS)は8月28日、「家畜・家きんの飼養および環境関連の表示の根拠に関するガイドライン」を改定した。2019年以来、5年ぶりの改定となった。
1 家畜・家きんの飼養および環境関連の表示の根拠に関するガイドライン
同ガイドラインは、食肉・食鳥製品に虚偽の表示、あるいは誤認を生じ得る表示がなされていないことを保証するために、家畜・家きんの飼養および環境関連の表示内容を証明するための方法を事業者向けに提供するものである。具体的には、アニマルウェルフェア(AW)、品種、給与飼料、飼養環境、抗生剤不使用、ホルモン剤不使用、原産地・トレーサビリティ、オーガニックおよび環境関連の表示について、表示例や表示の承認に要する根拠資料の内容を示している。
2 ガイドライン改定の経緯
USDA/FSISは2023年6月、業界関係者から、食肉・食鳥製品の表示の監督、特にその証明方法を再評価することを求める声が広く上がったことを踏まえ、消費者保護の観点から同ガイドラインを改定することを発表していた。
特に、「抗生剤不使用」の表示については、業界内でその信ぴょう性を問う声を受け、米国農務省農業研究局(USDA/ARS)と連携し、「抗生剤不使用」をうたう食肉・食鳥製品のサンプリング検査も実施してきた。米国内34州の84の食肉処理・加工施設において、「抗生剤不使用」とされる196頭の牛から検体を採取した結果、約20%から抗生剤が検出された。この結果も踏まえ、今回の同ガイドラインの改定がなされた。
3 ガイドラインの主な変更点
今回の改定による主な変更点は、表示例や根拠資料の内容の追加の他、これまで同じ項目として整理されていた「AW・環境関連」の表示の個別の項目立てへの変更、「抗生剤不使用」の証明方法としてサンプリング検査の推奨の追加などである(表1、2)。
例えば、給与飼料に関する表示では、新たに「どんぐり給与」「穀物給与」「トウモロコシ給与」の表示例を明記した他、「植物性飼料給与」の表示例の説明を追加した。また、飼養環境に関する表示では、「放牧飼養」と表示する場合に、出生からと殺までの間の大半を放牧地・牧草地で飼養されていることを証明する根拠資料の追加提出の推奨を明記した。
そして、「抗生剤不使用」と表示する場合には、生産事業者あるいは第三者機関による定期的なサンプリング検査の実施の推奨を明記した。これにより、治療以外の抗生剤使用を行った場合の不当な表示を防ぐ意向である。
USDA/FSISは同ガイドラインの公表に併せ、同ガイドラインに沿って、不当な表示がなされていると判断した場合には、検体採取を行う権限を有していることを示して注意喚起を行った。また、表示の証明に係る対応を強化するための規則制定などを含む追加措置の検討の可能性にも触れた。
【調査情報部 令和6年9月13日発】
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