中国の食肉衛生は、今年の3月15日の「世界消費者権利デー」
(注3)でも改めて明らかになったとおり、多くの課題を抱えている。
2024年上半期、中央・地方政府が協力して実施した1万2850社の食肉加工製品に対する品質基準のサンプル調査では、99.37%が合格であった。21年の同規模調査に比べ0.24%上昇し、過去最高の合格率である。不合格となる製品には、油や動物の血を使うもの、加工工程が複雑なものなどが多い。
食品衛生に関する問題が無くならない背景には、1)違法な食肉加工製品の提供が産業として成立してしまっている地域があること、2)中小企業で品質基準を満たす能力が足りていないこと、が挙げられる。
また、食品衛生問題の通報に関しては、真偽を問わず、食品衛生問題があるため通報する、として企業を脅すなどの手法を取ることで、通報を免れようとする企業から暴利を得ようとする行為も発生している。市場監督管理部門が市民などからの通報を受けた案件のうち、実に6割が専業者、すなわち、政府機関に通報するによって企業から金銭を得ることを仕事とする者からのものである。これらの者は、90年代生まれ、あるいは00年代生まれが主力であり、大卒が多く、弁護士資格を持っているような者もいれば、かつて市場監督管理部門で働いていた、というような者もいる。
食品衛生問題に対応するため、この4月から政府を挙げて「肉類産品の違法犯罪特化取締りプロジェクト
(注4)を実施している。すでに6486件を正式に受理し、3818件は行政案件として、221件は刑事案件として対応中である。警察が直接受理、対応した案件も579件に上る。
政府では、食品安全に関する行政規則を改正し、一部を認証制から届け出制に変更する一方、悪質な行為は取り締まる、というような管理監督の重点化を進めている。新しい商品群である半完成品(「預製菜」。ミールキットや、加熱すればそのまま食べられる食品など)に対する基準の策定も進めている。業界関係者には適切な品質管理と関係基準の順守を強く求める。
(注3)中国では、3月15日の「世界消費者権利デー」に合わせて、毎年、消費者が市場で発見した不適切な商品や事業者をインターネット上で、または、政府の担当部署に告発することが定着している。詳しくは海外情報『中国市場監督管理総局、2023年の市場取締り状況などを公表(中国)』(令和6年4月2日発)をご参照ください。
(注4)肉類産品の違法犯罪特化取締りプロジェクトについては、海外情報『中国国務院などが今年初の食品安全に関する取締りプロジェクトを公表(中国)』(令和6年4月23日発)をご参照ください。